紙に乗せた純情
小さい頃から、あの子と一緒に近所の公園で遊んでいた。
名前は知らない。近所に住んでいたのかも分からない。引っ込み思案で怖がりな子だったけど、とても優しくて思いやりがある子だった……気がする。
最後に会ったのが10年前だから、記憶がかなり曖昧だけど、可愛い子だったっていうのは覚えてる。
その子に会うために、暇があったら公園に行ったりしたんだけど、一度も会えたことはなかった。
僕は紙飛行機を作るのが昔から得意だから、紙にメッセージを書いて飛ばすことにしたんだ。もう今回で14回目。
「よし、できた。あの子に届きますように……」
紙飛行機を折り終わって、僕は祈り始めた。
「ほとんど無謀だって分かってるけど、もう一度だけでもあの子に会いたいんだ……」
ベランダに出た僕は、広い町に向かって紙飛行機を飛ばした。
「頼んだぞ。僕の想い……」
毎回この瞬間は不安と緊張に襲われるものだ。
紙飛行機はそよ風に揺られながら、遠くに飛んでいった。
私は小さい頃、隣町の親戚の家によく遊びに行ってたの。
でも、小学校に入学してから、隣町には全く行かなくなって……。ずっと勉強の毎日だった。
公園で出会った男の子にさよならも言えなかった。すごく後悔してる。
名前も知らないし、その子がどこに住んでいるのかも分からない。わんぱくで元気な子だった……と思う。
もう高校生になったんだから、その子にふと学校とかで会えるかなって思ったけど、全く現れなかった。
「今日は天気が良いなぁ。ピクニックに行けば良かった。まぁ、そんな暇ないんだけど。勉強に戻ろう」
一瞬、何か飛んでいるものが見えた気がした。
「あれ?あれは……紙飛行機?」
紙飛行機がこっちに向かってやって来る。
「誰かが飛ばしたのかな。これは、メッセージ?」
紙飛行機を開いてみると、メッセージが書いてあった。
僕は昔会った女の子にもう一度会いたいと思っています。
これを見てくれた人がその子かどうかは分かりません。
でも、もし、もしも心当たりがあったら、ここに来てくれませんか? 紡
メッセージの下に、どこかの住所が書いてある。私はすぐにこのメッセージの意味が分かった。
「あの子のメッセージだ……。絶対に!覚えててくれてたんだ……!!」
私は心底嬉しくなった。勝手に私の片思いだけで終わったら、きっと未練で溢れていたから。
「明日の予定が埋まったよ。待っててね」
紡君は、葉桜の下で待っていた。
僕は純情が弾けた音を聞いた。
超短編小説です。かなりピュアな物語になったと思います。
なろうラジオ大賞6に応募中です。よろしくお願いします。