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2.エンジェルのレットさん

「野菜も食いましょう。これでも栄養管理を任されています」


 そして目の前に出てきたのはキャベツ。半分に切ったものが皿に乗せられて出てきた。


「これを食えと?あまりにも雑じゃない?」


「そうですか?食わないよりいいと思いますけど・・・マヨネーズいりますか?」


「・・・いる」


 キャベツをまるかじりしたことはあるだろうか。葉物ではあるがそのままだと塊に近く、実は結構固い。ミリーはバリバリと音を立てて食べ始めた。


「千切りとかあるじゃないですか」


 それを見ていた犬がツッコミを入れてくる。そう、それはでもクラッキーに言ってくれ。


 ひょんなことから自由の旅に繰り出して、心をどこかに置いてきて、世界は今日も冷たくて、隣のメイドは眠りこけ、飼い犬は手を噛まずに私のキャベツを噛んでいる。


 天使が手元にやってきて「ああ、これがあなたの人生です」と書類を渡す。何も知らない私達、ハンコを押す手が動くだけ、ああ、悲しいのか分からない。


「・・・って感じかしら」


「何がです?」


「え?起きてたの?」


「そりゃもう、あなたのメイドですから」


 書類仕事をさっさと終わらせて原付でも見に行こうと思っていたのだけれど、思っていたよりも量が多くて時間が掛かっていた。


 クラッキーは立ち上がると「私、犬と散歩してきます」といって2階の方へ向かって行った。犬だって暇じゃない。歩かないと棒にぶつからないのだから。


「棒、どこやったっけ?」


 周囲を見渡すと傘立てを発見。そしてその中に持ってきた棒が入っていた。


「これをこうして・・・と」


 棒を手に取ると庭に飛び出し、そこに円を描く。そして円の真ん中にはお皿を置くとミリーは棒を天高くつき上げ言葉を唱えた。


「暇なら降りてきなさい」


 そうすると次の瞬間、白い服を着た天使がやってきた。


「・・・私の名前はレット・ランド。あなたの為の天使」


「それで?何の御用?」


「少し聞きたいことが有るんだけどさ・・・」


 この国は少し変なので説明をすると「守護天使協会」という組織が存在する。ちなみに天使ではない人間である。


さっきの棒が呼び出すためのなんか通信機でそれを使うと彼女のような天使がやってくるのであるが、これが厄介なことに来る天使を選べないばかりか、一度来た天使は契約天使となってほぼ一生同じ人と関わらなければいけなくなる。


「私も運が悪いわね、あんたみたいな奴と天使契約を結ぶなんて」


「そう?・・・近所に住んでいる人を選べないみたいなもんでしょ。あとは親も選べないし、友人も選べないし。選べることの方が少ないと私は思ってますよ」


「友人くらいは選ばせてよ。私の自由でしょ」


「まあ・・・そうね。それは選べるかもしれないけど」


 それでなんでこのレットを呼んだのかという話。


そもそも天使協会の役目はなんで有るのかと言えばなんであるのかは誰にも分からない。けれど、人ってたまに悩み事とか相談したくなる。そういう時に相手をしてくれる。


だから相談する為に呼んだのだけれど・・・。


「それで?呼んだのはどうして?」


「あーっと・・・それは」


 実はミリー、自分がお姫様であるということはしっかり自覚しているので、これをきっかけにして何か人々に出来ないか。ということをずっと考えていたのである。ミリーには責任が無いにしても両親が迷惑をかけてしまったことには間違いない。


「なるほど、つまり名誉を回復したいと」


「いや・・・名誉は回復できない。不名誉はより強い印象で上書きするしかないから」


 そう、いくらいい事をしても両親が税金の使い込みをして城に住めなくなった。という事実は変わらない。過去は変えられない。そして未来はわからない。それが生きるということなのだ。


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