#6 カオスな状況
それじゃ、攻略サポート組の紹介をしていこう。
まずは男子から、紹介していこうかな。
ふくよかながら博識な松田大智。
しっかり者だという平野優。
アニメオタクだが、エリート気質の井上魁人。
不思議系男子の田代奏太。
以上サポート組男子の紹介だ。
あっさりとした紹介になったが、彼らは頼りになるスキルを持っている。
松田であれば、叡智というスキルで俺たちの知りえないことを知れるらしい。だが、そのスキルを使う代償として強めの頭痛に襲われるとか。デメリットが大きめのスキルだけど、このボスラッシュで情報はかなりの戦力になるだろう。サポート組としてはかなり頼らせてもらうかもな。
それから、平野だがアイテムや武器を鑑定できるスキル。鑑定スキルを持っているようだ。試しに俺の武器の刹那を見てもらったが、特に変わった効果はないが、耐久力に非常に優れているらしい。まぁ魔王戦では、持久戦にならないから耐久力があってもなんだよな。
アニメオタクの井上は、自分の魔力を素材に交換できるスキルという、かなりユニーク目なスキルを持っている。素材交換は魔力の変換量に応じて、高ランクな素材と交換できる。今のところ出せる素材は普通の鉄程度らしく、高ランクの素材を出すニアは魔力量がぜんぜんたりないのこと。一回素材を交換するのに滅茶苦茶食就かれるそう。ということは、井上は魔力量が低いのかもしれない。いったん、まずいか魔力量が。
不思議系と言われている田代は、対面で会話していてもそんな素振りは今のところ見たことがない。というよりも、何かをずっと警戒しているみたいだった。彼の本来の姿は仲間思いなだけかもしれない。そんな彼のスキルはアイテム制作(防御)らしい。何やらお守りや、阻害などのアイテムを作れるようになるとのこと。お試しに作ってもらったお守りは神社のお守りのようなもので、何やら手馴れていた。そのことについて聞いてみると、退魔師の家系で悪霊を払うための道具やお守りを日常的に作っているとのこと。凄いな、現代日本に退魔師っていたんだな。衝撃的な事実を普通に教えてくれる田代は素直すぎる。警戒心はあるけど、天然なんだろう。
続いて、女子組の紹介。
おっとりした雰囲気の飯島芳野。何かと世話焼き気質なのか、梨乃のことを妹のように世話している。そんな飯島のスキルは裁縫スキルとメンタルケアらしい。彼女らしさが出ているスキルなんだろう。裁縫スキルは今のところ、防具や衣装の調整や少しだけ強化できるとのこと。防具を付けるときは飯島を頼らせてもらおう。
先ほど名前が出ていた、梨乃ノノ。よく人をからかうタイプらしいが、ボスラッシュの雰囲気に気おされて、今は飯島にメンタルケアされている。なんとか、スキルについて教えてもらえないか飯島を頼ったところ、アイテム制作(攻撃)だそうだ。
次いでにどんなアイテムが作れるか聞くと、強化バフや爆弾などの攻撃に関するアイテムを作れるとのこと。お調子者の彼女からは想像できないようなスキルで、少し驚いたが、趣味がプラモデルということで納得してしまった。
最後にこんな状況でも笑顔な有川愛菜だ。どうして笑顔なのかを聞くのは野暮なことんだろうな。有川はこの状況でも自分だけでも、笑顔で場の雰囲気を良くしようとしているのが伺える。そんな彼女だから、応援というスキルを得てしまったのだろう。
応援スキルは何かしらの形で応援することで、味方に色々なバフを与えることができる。今も、梨乃の元気を取り戻すために応援している。その効果あってかすこしずつだが、梨乃の表情には明るさが戻ろうとしている。
以上が女子組だ。
攻略サポート組はその名前の通りに、サポート的なスキルを持っていて、全員に役割が持てそうで安心した。
ただやっぱり、空気の重さは感じてしまう。
そこは少しずつでもいいから、交流を深めていって解消していこう。
というところで、仲間集めをさらにしようと思ったんだが、これ以上は望めそうにない。
ボスラッシュの空間にいる、仲間になってくれそうなグループというのがあまりにも難しすぎる。
コスプレをしていると思っていたが、そうではないとわかってしまう騎士と王子王女様グループに、どう見ても人工な人間たぶんホムンクルスの集まりのグループ、髪色と服装が派手すぎる不良っぽいグループ、冒険者っぽいグループ、何やら闇を抱えてそうなグループ、魔法使いっぽいグループ、何故か絶望している冒険者?っぽいグループ、見るからに奴隷のような見た目のグループ、意味不明なデバイスを操る恐らく未来人グループなど、個性が強すぎる上に話しかけづらいグループばかりで仲間になってくれるか怪しいラインが多すぎる。
その他にも、一人でいる人達もいるがそういう人たちからは警戒心や殺気が凄くて、絶対に近づけない雰囲気になっている。
今更ながら、この空間に集まっている人たちは普通じゃないのかもしれない。
というか確信した。このボスラッシュに集められて人達は何か理由があって集められたんだろう。憶測だが、神というやつの作為的な何かだろう。
例えばそう、デスゲームを開催して配信するとか....
「さぁ、さぁ、さぁ!!!やってきた今回も!!!」
「ライブアヘブン、ボスラッシュ!!!第666回目!!!」
天界の劇場を激しく舞う少年。
その少年はマイクを持って感情を乗せて、実況する。
「さて、今回のボスラッシュ挑戦者はこいつらだ!」
そうして、劇場のスクリーンに映し出されるのは、困惑している表情の挑戦者たち。
それを見た頭に輪っかの着いた観客は......
「おいおい、今回のやつらは気弱そうなやつらばっかりだなぁ!!!」
「これじゃ、第1層秒殺されちまうよ!」
「かわいい子もいるじゃん!どんな悲鳴をあげるんだろう!?」
「なんだ強そうなやつもいるな、安心したわ。」
「今回はダメそうだな。」
「おいおい、まだ始まったばかりだろ?!馬鹿言ってんじゃねぇよ。」
「俺は今回、あの吸血鬼にかけるぜ!」
「お、いいね。それじゃ、俺はあのフードの女にするか。」
「おいおい、そいつだけはねぇわwwwだってよぉちびじゃねぇか?!」
「あ?こういうのはなぁ、素性を隠している奴がつえぇのよ!素人はだまっとけ!」
「はい、はい!!!今回も賭けが激化していますが、ご安心を!」
「そこら辺のバランス調整はこの愉悦のアンロキがしっかりと行っております!」
「ですから、オーディエンスの皆さん安心して賭けていってください。」
そう少年が言い切ると同時に、爆発するように賭けの声が増加する。
ここは天界。死して清らかな魂が召し上げられる場所。
しかし、そこはデスゲームの配信の賭博場と化していた。
そんな惨状に変えてしまったのが、そうこの僕。
愉悦の神、アンロキ。
さてさて、今回のボスラッシュは特別会ですよ。
何せ今回は腕によりを寄せて、集めた期待のメンバーたちばかり。
簡単に壊れてもらっては困ります。
それに一人だけジョーカーもいるようですし......
はてさてどうなるでしょうね...?
それは私でも予想できません!
「それではみなさん、引き続きボスラッシュをお楽しみください!!!」
「絶望と葛藤、あるいは起こりえない奇跡にすがる醜い人間たちのリアルタイムショー。ああ、甘美それ濃さが完備で甘露なる瞬間だ。」
「生きて死んで生き返る。誰が考えたのでしょうこの地獄を?」
「それは僕、僕が作り出したんだよ!」
狂気の笑顔を貼り付けて、恍惚な表情で語るアンロキ。
「ボスラッシュ第1層を攻略した回は一回もない。」
「ああ、バカな人間たち。せいぜい楽しませてね?」
揺れ動く天界の劇場。
それは、糸峰と白龍川の突然の脱落により、さらに激しさを増すのだった。
ただ、脱落者はどこに行くのかという疑問を残したままだった。
魂を壊れたのならば、行く場所などないだろうと?
そう考えるのが普通だろうなぁ。
本当はそうするべきで、私も関与するつもりもなかったんだ。
それでも、今回は関与せざるをえなかった。
それは私の責任。
生み出した側の責任だ。
だからそう彼のために、私はルールを変えた。
「そろそろ、起きてもいいんじゃないかな。二人とも?」
そう声をかけてきたのは、真っ黒な女性と思わしき人だった。
その存在を確かに見ることはできないが、形だけは見ることができていた。
「ああ、そうか君たちには私という存在が見えていないのか。」
「すまないが、そのままでいてくれ。私は本来いるべきではない存在だ。」
「君たちに説明をしたら、ここから速やかに出ていくよ。」
隣を見れば、白龍川がいた。
「お前、白龍川か!?どうして、ここに!?」
「糸峰君こそどうして!?私たち、魂を消されたはすじゃ...」
「安心していいよ、君たちの魂は壊されたが私が救った。それにこれから壊される魂も救う。」
「君たちは仮初の器を与えて、一時的に生き返られせている。」
「どうするかというか、君たちには応援してあげて欲しいんだ。」
「それって誰を?」
「言わなくても分かるだろう?君たちが一番わかっているはずだ。」
「それって、ゼ」
「おっと、それ以上はお口を閉じていてもらうよ。」
俺は喋ろうとしても、口を縫われたかのように閉じられてしまった。
どういう力なんだよ。
「では、これにて私は君たちの前に現れるのは最後だ。あとの説明とかは君たちに任せるよ。」
そういって、その存在は消えてしまった。
「これって、この状況って、まだ生き返れるチャンスがあるってことか!?」
「そう...かもしれませんね。ある意味生き返ってはいるんですけど。」
「そうだった、仮初だが生き返ってはいるんだよな。俺たち。」
「糸峰君!あちらを見てください!」
そう、興奮気味に指をさしている白龍川の指をさしている方向に視線を向けると強大なスクリーンに先ほどまでいたボスラッシュの空間が映し出されていた。
その他にも観客のような人たちが、何万人という規模でいるように見える。
どうなってんだよここは!?
突っ込みどころしかない光景に、頭を押さえる。
「それで、応援ってあいつのことだろ。」
「そうですけど、どうやら彼の名前を言えないみたいです。」
「なんだよその変な呪い。」
「私もそう思いますけど、応援してほしいという気持ちは伝わりました。脱落してしまったものどうし、しっかりと応援しましょう!糸嶺君!」
「それもそうだなぁ。本来は死んじまってたらしいし、俺も応援すっかぁ。」
そうして、早々に脱落してしまった二人は。
ある存在の気まぐれで、生き返ってボスラッシュの配信応援をすることとなった。
この状況を何というか知っているか?
カオスというんだ。