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【ボスラッシュ!!!】  作者: Nex
プロローグ チュートリアル
4/22

#1 ピックアップされていたのは俺だった!?

 カツカツとシャープペンの芯が擦れて音が鳴る。


 ノートには奇麗な字で黒板の板書が書き写されていく、それを行っているのは一人の男子高校生で退屈そうに授業を聞いている。


(あ~あ、いきなり魔法陣とか出てきて異世界召喚とかされないかなぁ~)


 そんなことを心の中で願ってしまう。自分に中二病乙と自分で思ってしまっているのが何とも言えない痛いヤツである。


「はぁ......」


 バカらしいことに溜息が漏れる。


 これからどうしようか?もうじき高校生活が終わってしまう。


 今は高校3年生で、今年で18歳になる。この時点で、将来のことを何も考えられていない。


 というよりも、将来が見えない。



 何かになってやろうとか思って必死に努力してないし、夢とかいう大層なものを自分の心のうちに宿してはいない。


 情熱的な感情が欠けているようでならない。


 人の役に立ちたいかと言われれば違う、社会の為なんてもっと嫌だ。

 だがそれ以上にこの世界はお金が全てで、お金がなければ人は死んでしまう。



 生きるためにお金を稼ぐという行為には疑問を持たない。


 世知辛い世の中だとも思うけど、狩猟採集時代よりはましだし、お金さえ払えば欲しいものは大体手に入るいい時代だと勝手に思う。


 この時代に生きていていいと思ったことは一つくらいしかない。


 それはソシャゲ。


 そして一番そのソシャゲの中で大事な要素がガチャである。


 ガチャそれは真理。


 ガチャを引くという行為は何が出るのかという期待と何も出なかった時の不安が同時にやって来る。


 そのハラハラが途轍もなくたまらなく、最高レアのキャラクターを引いた時の感覚は至上の喜びとも言える。


「あ、今日のガチャ更新来てる。」


 スマホを机の下で操作して、IFというアプリをタップする。何度かタップしてガチャ画面を開くとメカメカしい騎士のキャラクターがピックアップされている。


「うわ、限定キャラクターかよ。それにもうガチャ石がない。最悪だ......」


 こういう時、普通の人はどうすると思う?


 大半の人はガチャ石を無料でもらえる範囲で集めて引くだろう、そしてその無料石で引けなくてほしいキャラの場合は無理のない範囲で課金してガチャ石を買うのだろう。


 しかし、俺は違う。


 ガチャ石がないというのなら、やることはただ一つ。


 課金だ。


 そんな馬鹿な決意をしていると、授業終わりのチャイムが鳴っていたようで、あとは放課のHRが終われば、放課後になる。


 HRは特に変わったことはないが、最近人が神隠しにあったように消える事件が連続で発生しているそうなので変な場所に立ち寄らないように帰るようにとのことだ。


 はぁ、バカバカしい。神なんているわけがないのに、神がいるのだとしたらこんな夢も感情もない人間は作らないだろう。


 もしくは神はいるが人間みな平等ではないかか......?


「いやいや、そもそも神なんていないに決まっている。それは科学が裏付けしているはずだ。」


 だが、本当に神がいるとしたら?


 いるのだとしたら俺をどうにかやる気のある人間にしてほしいものだ。


 そう思いながらも、足はコンビニへと向かっている。


 財布の中には1万円札が5枚。


 もちろん、天井だ。


 どこからこんな金が出てくるかと言えば、アルバイトである。


 正確にはアルバイトではないのだが、喫茶店で働いていて、主に接客もしているし、厨房に入る場合もある。


 基本的に俺は器用なので何でもできてしまうがために重宝されている。


 それにそのアルバイトもどきは放課後に毎日行っている。


 それもあって、かなり稼げていると思いながら、魔法のカードに手を伸ばす。


 そしてその魔法のカードをレジの前に持っていき......


「すいません、5万円分お願いします。」


 そういって、店員の人にドン引きされるのがワンセットだ。


 あぁ、この人終わってるんだと思っているんだろうなぁ。


 でも仕方ないじゃないか、俺の気持ちを揺さぶってくれるのはガチャを引くときだけなのだ。


 それ以外で感情を揺さぶるようなことは、自分の死や誰かのために必死に行動するときだけだ。


 会計を終わらせて、手渡される魔法のカードを手にし、足早で住んでいるアパートに帰宅する。


 俺は一人暮らしで家族はありたいていに言えば、蒸発したというやつだろうか。


 気づいた時には家族がいなければ、気づいたらもう高校生で喫茶店で働いて生きていくしかなかったのだ。


 思えば、5歳くらいの頃だ。


 その頃に喫茶店のマスターに拾われてから、喫茶店で働くようになったんだったな。


 家族と言えるのは、マスターと義妹《結衣》くらいしかいないのか。


 なんか振り返っても何もないな、俺の人生。


 こんな俺を拾ってくれたマスターには感謝してもしきれないし、結衣には何かと支えてもらっているし。


「すまん、マスター今月の給料、ガチャに消える!」


 そうは思いながらもスマホを動かす手はアプリに課金しガチャ石を買っている。


「くっ...!これがガチャの魔力......!抗えない!」


 そうして吸い込まれるように押した、10連ガチャのアイコン。


 だが、そこで現れた演出は今まで見たことのないような眩いばかりの光であった。


「......これ来たか!!!」




















 光が収まったのか、閉じた瞼に光が入ってこない。


 そして恐る恐る目を開ければ......





 ......見知らぬ空間にいた。



「......は?」


 そんな情けない声が第一声だった。


「ここはどこなんだ?」


 その疑問に答えてくれたのは同じ人間だった。


「なんだ、遅れてきたやつがいるみたいだぜ?」


「あら、あら、大丈夫ですか?」


 声をかけてくれた二人は何というか陽のもののオーラを感じる!


 いや違う、この人たち以外の方からも圧倒的なオーラを感じる。


 この空間には多くの人がいるが、多彩なオーラを放っている。


 あり得ない、こんな状況はおかしすぎる。夢で見ているのか?


 寝落ちしてこんな変な夢を見ているのだと、思って頬をつねるが......


「......痛い。」


 しっかりと痛覚があった。


 まて、待ってくれ。


 その場合、俺の10連ガチャの結果が無くなったということだろうか。


 急いでスマホ見れば、スマホは何もかもバグっていて、見ていると不快感が凄かった。


「これは......この状況は一体、どういうことなんだ?」


 その疑問にまた答えてくれた青年が言う。


「ああ、この空間はな。何でもボスラッシュ?とかいう場所らしいぞ。」


 ボスラッシュ?なんだそりゃ?聞いたこともない場所だ。


「ええ、そしてそのボスラッシュをクリアすれば、晴れて元にいた世界に帰れるそうです。」


 クリアすれば帰れるなんてゲーム的だなと心の中で思っておく。


 俺の疑問に答えてくれた二人は困惑する自分の体の手を引っ張って立たせてくれる。


 初対面だというのに手を貸してくれるなんて優しい人たちだな。


「それでそのボスラッシュっていうのは何をするんだ?」


「そのボスラッシュってのがみそでな、今さっき神っぽいやつから説明があったんだよなぁ。お前、来るタイミングが悪いやつだよなぁ~。」


 明らかにやれやれと言った態度ながらも、どこか仕方ない奴だなという視線が俺に送られているのが分かる。


「簡単に説明しておくとですね。ボスという階層主を倒していくそうです。それが沢山いてそれを全部倒すのが目標だそうです。それから、死んでしまったとしても、何度でも復活できて、何度でもボスラッシュに挑めるそうです。嘘みたいな話ですけどね。」


 そう言って、銀髪の彼女は可笑しそうに笑った。


 ???????


 何回でも死ねる?階層主を倒す?


 この人たちは何を言っているんだ?


 IFインフィニティ・ファンタジアのやりすぎて俺の頭がいかれてしまったんだろうか?


「ああ、これはあれだ現状を受け入れられてないやつだな。わかる、俺もこの説明を聞いた時、そうだったからなぁ。」


「私も同様のことを考えていましたから、彼が戸惑うのも無理はないかと。」


「えっと、すみません。突然すぎて驚いていました。ですが、大体の状況は分かりました。その階層主とやらを倒せば帰れるということですよね。」


「どうして急に敬語なんだ?んまぁ、そうなんだがなぁ、いろいろあんだよ。他にも説明しておかないといけなことが......ほら、あそこ見えるか?」


 そういって、金髪の彼が指さした方向にはファンタジーでしか見ることのないような武器や防具、魔法の杖なんかもあるが、それと別に銃なんかもあった。


「何でもありかよ!」


 突っ込まざるを得ないような、馬鹿げた景色だ。ここはアニメや漫画のような場所らしい。


「まぁそうなるわな。試しにあそこから取ってきたナイフ握ってみるか?」


 そういわれて金髪の彼から差し出されたナイフを握ってみるとずっしとした重みと輝く刃に鏡映しに映った自分をその鋭利な輝きが刺した時の情景を想起させるのであった。


 そうして、俺はそのナイフをすぐに金髪の男に返却する。


「すぅ......これが本物だというのがよ~くわかったよ、ありがとう。」


「おいおい、大丈夫か?手が震えてるぜ?」


「ああ、一応大丈夫だ。」


 それでだなと、金髪の男が次の説明をしようとした時だった。


「うわぁあああああああああああああああ!!!」


 この空間が割れんばかりの咆哮のような絶叫が耳を劈いた。

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