#1 ピックアップされていたのは俺だった!?
カツカツとシャープペンの芯が擦れて音が鳴る。
ノートには奇麗な字で黒板の板書が書き写されていく、それを行っているのは一人の男子高校生で退屈そうに授業を聞いている。
(あ~あ、いきなり魔法陣とか出てきて異世界召喚とかされないかなぁ~)
そんなことを心の中で願ってしまう。自分に中二病乙と自分で思ってしまっているのが何とも言えない痛いヤツが俺である。
「はぁ......」
バカらしいことを考えて溜息が漏れる。
これからどうしようか?もう直に高校生活という舞台から降りなければならない。
高校3年目、就職するのか大学に進学するんだか未だに決めきれない。
人の将来というのは幸せや夢を形にするため考えるものなのか?俺はその問いの答えを暗中模索している最中だ。
特に何かになってやろうとか思って必死に努力はしていないし、夢とかいう大層な灯も心の内で燃え盛っていない。
情熱的な感情という感情のピースが俺の胸内から誰かに奪い取られたみたいに無くなっている。
仕事を見つけて就職できたとして俺には何が出来るだろうか?当たり前の仕事を振られて毎日業務だけをこなして疲れて寝てまた仕事?
それは少しつらいだろうな。日本という社会を凝縮している。
働いて働いて。根詰めてまで仕事ってするものだろうか?
答えはなんだろう。お金が欲しいから?上のポストを勝ち取るため?
俺の悩みの種を膨れ上がらせるのはやめにしよう。
最悪俺にはカフェの仕事があるんだし、隆二さんに厄介になればいいだろう。
まぁその時は、頭ぶん殴られるくらいは説教されるだろうな。
俺に生きることを教えてくれた親代わりの存在。そんな人に対して高校まで育ててもらって「何だろう会社勤めって辛くない?」「親父のところで働かせて貰った方が何かと良くない?」というのは虫が良すぎるだろう。親不孝すぎる。
形に出来るといいな。将来。
時計の針を見れば、授業はあと5分で終わるような時間に差し掛かる。
机の下でスマホを開いてアプリを起動する。
ほんのりとした光が机の下で揺らめく。
それはソシャゲ。
インフィニティ・ファンタジアと呼ばれるゲームであった。略称はIF。
IFのログイン画面にまでたどり着いて自動的にポップアップ表示されるお知らせ。
それは限定ピックアップの更新。
引かなきゃ(確信)
今回の限定ピックアップは機械使い。恐らく進化を重ねることで滅茶苦茶かっこいい洗練されフォルムの機動兵器になると思うと心がざわめく。
鐘が鳴る。授業が終わった。
帰り支度は住んでいた。脚は直ぐにでも帰ろうと歩を進めようとしている。
だが、待てと言わんばかりに担任のHRが俺の足を拘束した。
HRでは最近、人が神隠しにあったように消える事件が連続で発生しているとのことで遊びたい気持ちを我慢してすぐに帰れとのことだった。
神隠しか。漫画やアニメでもなければそんなことは現実に起こりえないはずだ。
誘拐やその先の人身売買とかヤバ気な話が現実的な落としどころの話になるんだろうか。
まぁいいや。俺は神隠しにあっても最初に祈ることはファンタジー世界に転生か転移のどちらかだ。神がいるのなら俺の願いはきっと届いているはずだろう。今頃。
「さてと......コンビニによってから帰るか。」
起動されていたIFのガチャ石の数は驚異の0。
ガチャってすごいよなぁ、いつの間にかあんなにあったガチャ石が消えてやがるんだから。うんうんと謎に分かるよぉ~と自己肯定する。
パチリと財布の中を開けば、一万円が5枚。
今月の生活費を犠牲にしても欲しいロマンアタッカーだ。
すまない隆二さん。
でも俺の本当にやりたいことは今これしか見つかっていないんだ。
正確にはガチャという抽出器の排出と演出に脳を焼かれているだけ。
喫茶店でしっかりてきぱきといつも以上に働くから許してと誰に聞こえるでもなく心の中で乱舞を繰り返す。
勇み足で向かったコンビニに入店して、魔法のリングを5枚手に取ってレジに並ぶ。
終わってるポイントとして夕飯や飲料をついでに買っていくのではなく、5枚のギフトカードをセットしているという点が終わっているポイントを高得点にしている。
でも仕方ないじゃないか、俺の気持ちを揺さぶってくれるのはガチャを引くときだけなんだ。
それ以外で感情を揺さぶられるようなことは自分が死ぬときか、隆二さんか義妹の結衣がいなくなってしまうときかだろう。
会計を終わらせて手渡された魔法のカードを手にして、足早で住んでいるアパートに帰還する。
真っ暗な照明が俺を出迎える。当然、俺の住んでいる部屋には俺以外誰もいない。
そして、俺に実際の家族はいない。実際にはいたらしいが情報がなくなっていた。
物心つく前から俺は捨てられていたらしい。家族との記憶が存在しないんだ。
思えば、5歳くらいの頃だ。雨の降る中、喫茶店さみだれで雨宿りしていた俺を店に招いて世話してくれたんだっけ?あの時に飲んだホットココアは今でも鮮明に思い出せる味の一つだ。記憶に残る味っていうやつだ。
その頃に喫茶店の隆二さんに拾われてから、喫茶店で働くようになったんだよな。
思えば家族と言えるのは、隆二さんと義妹の結衣くらいしかいないのか。
こんな俺を拾ってくれたマスターには感謝してもしきれないし、結衣には何かと支えてもらっているし。
だけどそれはそれ。ガチャはガチャだ。
「くっ...!これがガチャの魔力......!抗えない!」
買ってきた魔法のカードがチャリンチャリンとIFに食われていく。
ちゃんと喫茶店で働いて得た俺の使える金。生活に支障が出る範囲で物を買うなと言われているが、仕方ないんだ。
「うなれ!俺の右人差し指!」
限定ピックアップガチャのガチャ石が購入されてガチャ石が消費されていく。
いつものガチャ画面に遷移する。
だが、そこで現れた演出は今まで見たことのないような眩いばかりの光であった。
「......これ来たか!!!」
光が収まったのか、閉じた瞼に光が入ってこない。
そして恐る恐る目を開ければ......
......見知らぬ空間にいた。
「......は?」
そんな情けない声が第一声だった。
「ここはどこなんだ?」
俺の短い疑問に答える人間がいた。
「なんだ、遅れてきたのか?」
「あら、あら、大丈夫ですか?」
声をかけてくれた二人は何というか存在上位者オーラを感じてしまった!
くっ、俺は日陰のものだ。(世間一般で言うゲームオタクに分類される人種)
というかなんだ。この異常な感じは?周囲を見渡せば、この二人以外からも別の上位者オーラを感じる。
あり得ない、こんな状況はおかしすぎる。夢で見ているのか?
寝落ちしてこんな変な夢を見ているのだと、思って頬をつねるが......
「......痛い。」
しっかりと現実が痛覚をフィードバックしやがった。ちくしょう。痛い。
となると待って欲しい。
これは本当に現実だということ。
その場合、俺の10連ガチャの結果が無くなったということだろうか。
急いでスマホ見れば、スマホは何もかもバグっていて、見ていると不快感が凄かった。
「これは......この状況は何がどうなっているんだ?」
その疑問に呆れたように金髪の格闘家っぽい青年が答えてくれた。
「ああ、この空間はな。何でもボスラッシュ?とかいう場所らしいぞ。」
ボスラッシュ?なんだそりゃ?TVでも聞いたことのない番組名だ。
「ええ、そしてそのボスラッシュをクリアすれば、晴れて元にいた世界に帰れるそうです。それが本当であればの話ですがね。今のところ確証はとれていないのでわかりませんとお伝えしておきますね。」
銀髪ロングヘアーの清楚を体現したような美少女が補足して説明してくれた。
何というか二人とも顔面偏差値が高すぎる。くっ眩しい!
ボスラッシュというのをクリアすれば帰れる。本当にゲーム的な企画に誘拐されたのか?まさか神隠しというのはこのゲーム企画のことだったのだろうか。
少し興奮を抑えて、二人を見返すと手を貸して地べたに座っている俺を引っ張って立たせてくれた。
初対面だというのに手を貸してくれるなんて優しい人たちだな。
「それでそのボスラッシュっていうのは何をするんだ?」
「そのボスラッシュってのがみそでな、今さっき神っぽいやつから説明があったんだよなぁ。お前、来るタイミングが悪いなぁ。」
明らかにやれやれと言った態度ながらも、どこか仕方ない奴だなという視線が俺に送られているのが分かる。やめてくれよ俺は巻き込まれ主人公とか不運体質じゃないんだが?むしろ器用貧乏枠だと自負するくらいには何でもこなせてはいる。
「簡単に説明しておくとですね。ボスという階層主を倒していくそうです。それが沢山いてそれを全部倒すのが目標だそうです。それから、死んでしまったとしても、何度でも復活できて、何度でもボスラッシュに挑めるそうです。嘘みたいな話ですけどね。」
そう言って、銀髪の彼女は可笑しそうに笑った。
???????
何回でも死ねる?階層主を倒す?
この人たちは何を言っているんだ?
IFのやりすぎて俺の頭がいかれてしまったんだろうか?
「ああ、これはあれだ現状を受け入れられてないやつの顔だ。見たらわかる、俺もこの説明を聞いた時、そうだったからなぁ。」
金髪の彼は俺に同情しているように見える。
「私も同様のことを考えていましたから、彼が戸惑うのも無理はないかと。」
深呼吸を挟んで一旦、真面目に会話を試みる。
「えっと、すみません。突然すぎて驚いていました。ですが、大体の状況は分かりました。その階層主とやらを倒せば帰れるということですよね。」
「どうして急に敬語なんだ?んまぁ、そうなんだがなぁ、いろいろあんだよ。他にも説明しておかないといけなことが......ほら、あそこ見えるか?」
そういって、金髪の彼が指さした方向にはアニメや漫画でしか見ることのないような武器や防具、魔法の杖。驚くべきことに銃も置かれていた。
「何でもありかよ!」
突っ込まざるを得ないような、馬鹿げた景色が広がっていた。
「まぁそうなるわな。試しにあそこから取ってきたナイフだ。握ってみるか?」
そういわれて金髪の彼から差し出されたナイフを握ってみるとずっしとした重みと輝く刃に鏡映しに映った自分をその鋭利な輝きが刺した時の情景を想起させるのであった。
そうして、俺はそのナイフをすぐに金髪の男に返却する。
「......これが本物だというのがよ~くわかったよ、ありがとう。」
「おいおい、大丈夫か?手が震えてるぜ?」
「ああ、一応大丈夫だ。」
それでだなと、金髪の男が次の説明をしようとした時だった。
「うわぁあああああああああああああああ!!!」
この空間が割れんばかりの咆哮のような絶叫が耳を劈いた。
第一話大幅に改修




