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【ボスラッシュ!!!】  作者: Nex
第一層 魔王テネブリス攻略編
22/28

#6 記憶の海の味は塩らしく

深い海の底に落ちていく。

 そこには光も届かない程の闇がある。


 藻がいて泳いでも水面は見えず、ただ泡が膨れて浮かんでいく。


 俺はこのまま沈んでいくのか?


 こんなにも暗くて寂しいのはいつ以来だろう。


 それはあの時の雨の日と同じくらいのことだと思う。


 あの雨の日に俺は顔も知らないあの人に拾われた。


 顔も名前も思い出せない程のモヤのようなあやふやさ。

 暖かいコーヒーも無遠慮なタオルの摩擦も全部が暖かかった。


 あの子の名前もあの時のことも何も思い出せない。

 きっと絶対に忘れてはいけないことなのに。


 俺が俺でいるための自己証明であるはずの記憶。


 いつの間にか俺は廊下に立たされているような感覚に変わった。

 床は透明度の高いフローリングでぴちゃぴちゃと水が跳ねる。

 俺はまだ記憶の海で溺れている。


 もっとこうすればああすれば懺悔めいた後悔を額の奥に滲ませる。

 悔しい、何かしたかった、もっとできたことがあったんじゃないか?


 俺は何かを見落としている。


 この記憶の海は永遠と走っても走っても続く無限回廊。


 何度も駆け抜けたあやふやで朧気な記憶。


 何か違和感があったんじゃないか?


 記憶を取り戻すために必要なものがあったんじゃないか?


 そうしてようやく響く音の記憶。


「《《妹を頼れ》》」


 あの子のことだ。


 そして俺の義妹のことだ。


 忘れていたのに、思い出せた。


 黒くて闇みたいな顔の彼の言葉が深く心に突き刺さってようやく思い出した。


 その衝撃が水面の鏡に罅を入れる。


 脱出口はすぐそばに、すぐ隣にいつもいた。


 俺は床を殴る。ひび割れた鏡が壊れるまで何度でも。


 パリンと大きな合図で目が覚める。


「ここはどこだ?」


 周囲は暗く、ベッドに寝かされていてファレナが俺の手を握って眠っていた。


 俺はすやすや眠ってしまった彼女に微笑む。


「......ありがとう。君のおかげで帰ってこれたよ。」


 小さな声だったが、それでも彼女を起こすに十分だったようだ。


 ううんと小さくうなった彼女はぽやぽやとした顔で俺を見つめる。


「......おはようございます......ゼディア様。体調は......元気そうですね。」


 俺の表情を見た彼女はまた陽だまりのような笑顔で笑った。

 でもちょっと眠そうだった。


 どんどんと部屋の扉がノックされる。


 誰だろうと思ったがファレナは宿の人だから大丈夫とぼそっと言ってくれた。


 かちゃりと扉が開かれる。


 すると背の大きい中年の男性と小学生くらいの少女が部屋に入ってきた。


「おいおい、いつまでたっても降りてこねぇから心配したんだが、なるほどな。

 すまん疲れてるよな、アイツとやりやってんだからよう。」


「わぁ、お兄さんとファレナお姉ちゃんが手つないでる。二人ってやっぱりパートナー同士だったの?」


 おっと純粋な質問が起きてからいの一番で効くなこれ。


「違います。恋人的なパートナーではなく、あくまでも仲間という意味でのパートナーです。ですよね???ファレナさん?」


 少し圧をかけてファレナに問うと。


「ええっ!そうです......けど。」


 何故か不満げになってしまった。むすっと口を結んで、繋がれていた手がさっと離れる。


「くぅ~~~!お熱いねぇ。若いってのはいいこった。俺も昔はあんな風に女房となってたっけか。」


「お父さん、そういうのいいからお食事!」


「おっとすまんすまん、ついな。夕食持ってきたからここのテーブルに置いておくぞ。あと、俺は大和田フトシ。」


「私が大和田ハルカっていうのよろしくね、ゼディアお兄さん!」


「ああ、俺は神鶴ゼディア。今後ともよろしくお願いする。」


 そうして宿屋の店主とその娘らしい気前のいい笑顔で二人はこの部屋を後にしていった。



 テーブルを見ればシチューのような料理が置いてあった。


 湯気が出ていて、眠っていた俺たちのために温めてくれたのだと分かる。


 俺はベッドから起きぬけようとすると、少しよろける。

 軽い筋肉痛が俺の足を引きずっていた。


「大丈夫ですか!ゼディア様!」


「大袈裟だよ、ファレナ。ちょっとした筋肉痛だ。」


「そうですか......」


 よろめいた俺をファレナが少し介護してくれながら一緒に夕食のシチューを二人で食べた。


 シチューの感想は言うまでもなく10点満点だった。


 ちなみにファレナはシチューを初めて食べて感動していた。少し目元がうるっとしていたような気がする。よほどお腹がすいていたんだと思う。

 料理って偉大だ、それで今日を締めようと思う。

 明日は冒険者ギルドにもう一度行って、冒険者登録できるといいなぁ。

次の更新は9/7。すいません。魔獣・魔物図鑑投稿したので許して。

図鑑に出てくるモンスターは全て本編に登場予定。

遅れてしまうのはよくあること、星の輝きに少し魅入られてしまって......やはり美少女とはかくも美しいものなのですね?ちなみに本編で恋愛関係が進むことはないしエッチな表現は作者が苦手なのでほぼ出てきません。物語のために必要になったらやぶさかではないです。


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