#EGO トリニティ・エンド
作者の前作の最終話
世界は彼を否定した。
彼はそれを彼自身の力で真っ向から否定した。
故にこそ、彼女は彼を見つける。
望んだ片割れは黒で、見つけることの困難な見分けのつかないような黒。
それは間違えないほどに近くにまで到達していた。
超越―――
黒の超越。
ああ、彼はやっと僕を見ることが出来るんだね?
もう誰も僕を見つけてくれないと勘違いしてしまうところだったよ。
そんな待望の黒の光は、三本の剣を召喚していた。
始まりの剣は火。
世界の全てをそのひと振りにて燃やし尽くした。
魔力でさえも余燼で燃え尽きるほどに。
変遷の剣は水。
燃え尽きた概念も世界も全て水に流してかき消した。
焼けた焦土は水を得て地は固まる。
終わりの剣は命。
その剣をもってして、世界は再創造される。
知っているこのときを。
待っていたこの光景を。
世界の創造と破壊を束ねるその絶技を。
「トリニティ・エンド」
三本の剣線が束となり、一つの世界を成す。
神も命を概念でさえも、破壊されて書き換えられて、新たに新生する。
だけどそれは。
彼の魂の終わりを示す輝きの一閃。
彼の願うすべてをもってして魂を燃やし尽くすほどの力。
所詮は彼の身体は人間でしかなかったのだ。
その力は彼という器には耐えられるものではなく、彼の身体は蒸発する。
もう終わりだなんて、やっと見つけられたのに......
初めての喜びも、
初めての悲しみも、
その一瞬に詰まっていた。
彼の魂の残滓はあの世界に宿ったのだろうか?
であるのならば、僕は彼を見つけなければならない。
彼の残滓から魂を再生する。
私ならそれができる。
私は白の超越、アニムス・フューランス。
世界の始まりを知り、世界の始まりを超越したもの。
白始のロアには少しだけ、私の我儘に付き合ってもらう。
どうしようもなくダメな片割れのためにね。
白の翼は、今まさに神羅万象が創造された世界を超超光速で、駆け回っていく。
魂は一度消えれば、もう二度と形を戻すことのできないものと言われている。
それが何故か?
魂という概念自体がもろいテクスチャのようなもので、それでいてCPUのように大事な部分でリソースが詰まっているからだ。
魂の復元を試みようと思えば、まずその魂の残滓が無ければ、することさえできない。
だが、今回はアニマ・フューランスの魂の残滓は彼の創造した世界に散らばった。
よって、彼女はアニムス・フューランスは彼女の全ての能力をもってして魂の残滓回収RTAを開始したのである。
そして、彼女の能力をもってすれば......
「よし、これで全部だろう。」
「待っていろよ、アニマ。今、復活させてやるからな。」
魂の復元は淡々と、世界の外側の魔力が歪な形に変わるほどの出力で、
吸い込まれていく器は、黒の渦のように全てを吸い込む。
段々とその渦は形を成していく。
その形に翼はないが、人間だと分かるようになっていく。
そうして、ただ一人の人間が世界の外側で初めて誕生した。
誰もいない世界に、白色の翼と黒色の魂がようやく邂逅するのであった。
始まりは白。
終わりは黒。
そうして、世界の光が新たな世界を祝う。
新ステージの始まりを告げるように、新たな色が世界に輝き始める。
その新たな世界を旅する二匹の鶴が、観測者である彼らによって放たれたのは誰も知ることのできない便りだ。
その二匹の鶴は一体、何を為すのだろうか?




