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昼間のテレビ(ショートショート)

作者: 月詠桔梗


昼間のテレビは落ち着かない。

不安になる。

心がざわざわする。

迷子になっている気分だ。


【昼間のテレビ】


私の家では、基本昼はテレビはついていない。

準備でバタバタしながら朝のニュースを見て

朝のショートドラマを見たらテレビは消える。

次につくのは夜のニュースかバラエティ番組だ。

しかし、例外がある。

それは父と2人で留守番をするときだ。

父と2人で留守番すると、何をしたら、何を話せばいいのか互いにわからず沈黙が続く。

私は沈黙が続いても、静かな時間であれば問題としないのだが父はそうではないらしく、テレビをつける。テレビの中では昼にバラエティ番組がやっていて、芸能人が笑っていたり食べ物を紹介していたりする。

でもそれは小さい私にとっては面白いものでも楽しいものでもない。

ただひたすらにこの時間が無事に過ぎて母が帰ってくることを祈っている。

何かの拍子に父が怒り出すかもしれない。

父の職場から電話が来て、父が不機嫌になるかもしれない。どうかそんなことがありませんようにと、小さい頃はプリキュアや妖精に願った。

たとえ父が不機嫌になっても、父の部屋に籠ってくれれば問題はない。けれどリビングで暴れ出した場合、私にはどうすることもできない。空気になるしかない。

ここまで、一言も私は話していない。

たまに父が「おやつでも食べるかい?」

と聞いてくるだけだ。

おやつが喉を通るような状況ではない。

静かに首を横に振る。

何回目かで気づいた。

これは、父が食べたいんだな。

だからこのまま首を横に振り続けると不機嫌にさせてしまうことになる。

口を開きかけた。

でもまてよ。

今ここで「食べる」と言ったら

さっきまで食べないと言っていたのにと、

父が不機嫌になるのではないだろうか。

もう一回、聞かれたらにしよう。


しかし、いくら待っても父はもう私に聞いてこなかった。

不安になった。

機嫌を損ねてしまったのではないか。

暴れ出して、昨日がんばって積み上げた積み木を倒されたらどうしよう。

机をひっくり返されたらどうしよう。

グラスを投げられたらどうしよう。

それが割れたらどうしよう。

泣きそうになる。だめだ。がまんだ。

今泣いたら、それこそ確実に不機嫌にしてしまう。

そのとき、良い考えが浮かんだ。


私は「お昼寝する」と言って

毛布にくるまった。


最後までお読みいただきありがとうございます。

昼間のテレビは好きですか。

ふたりきりの留守番は不安を感じませんか。

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