魔王降臨
王子は神官たちに向かって叫んだ。
「だから、言っただろうっ! フランシスを歓迎して迎えるべきだった!」
王子の喉は熱かった。
「彼女の力を恐れるべきではなかった。魔王を打ち倒したそれを褒めて称えるべきだったっ!」
「しかし、ルーア王子、今さらそのようなことを申されましても……」
「今さらっ!? 何をバカなことを言ってるんだ。貴様らの勝手な行動がこのような悲劇を招いたのではないかっ!」
「……」
「彼女はもはや魔王だ。そして、彼女を魔王にしたのは我々、否、貴様らだっ!」
「……」
「私の影武者を使ってフランシスに婚約破棄を言うように仕向けたのもお前たちだろうっ!?」
「しかし、フランシスは強大になりすぎた。それを処すことなくこの国に平穏などないものと……」
「平穏? もはやそんなものはない。この国はただの荒野だ。国を名乗れる土地ではないっ!」
ーー、フランシスの復讐から決死の思いで逃げ出した王子と神官たちの言い争いはしばらく絶えなかった。
新しく魔王を産み出したのは、彼ら人間に他ならないのだった。
「恐れる必要なんてなかったのだ。彼女は……、フランシスは心優しい乙女だったのだから」
漆黒の荒野に王子の弱々しい声が響くばかりである。
読んでいただきありがとうございました。
勇者が強くなりすぎて、それを恐れた人たちによって追放されてしまうというシチュエーションから発想しました。
よければ評価等していただけますと嬉しいです。