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14

 

 八月のあの日から。

 高田くんとの約束は未だに果たされないでいた。

 果たしたくても果たせないのである。


 澄彦さんとのたった一つの約束。


『必ず地鎮祭をすること』


 地鎮祭とは工事を始める前に、その土地の神様を鎮めて、この土地を利用させてくださいというお許しを得るためのものだ。

 私のイメージ通り、神主さんが行うもので間違いはないらしいんだけど。

 色々と契約が進み、そしていざ実行という時に問題が起こってしまったのである。


『地鎮祭が行えない』のである。


 高田くんの会社である協和不動産は当初、五村内にある五つの神社のどこかに依頼をして地鎮祭を行おうとしていた。

 けれどこの五村の神社の神主さんは誰一人として引き受けてくれなかった。

 それもそのはずである。

 協和不動産が手を付けようとしている土地は正武家が護り鎮めてきた土地で、自分たちの手には負えない『何か』が眠っている。

 大人しく眠っているものをわざわざ地鎮祭をして目覚めさせて許可を得ようなどとすれば、許可を得られないどころか暴れ出してしまうかもしれない。

 触らぬ神に崇りなしという訳で、五人の神主さんは口裏を合わせて断るようにした。とは香本さんの調べ。

 そしてそんな流れはこの田舎の五村では敏感に村民に伝わってしまう。


 正武家様が土地を貸し出すが、どうやらよそ者は当主様との約束をまだ果たしていない。

 いやいやそもそも正武家様は本当は土地を貸すのが嫌で無理難題を吹っかけたのではないか。と。

 ならば正武家様が嫌がるのならば、我らも建設反対である。とまぁ単純な考えで五村内では一致団結してしまっていた。


 しかし協和不動産側としては、どうしても工事を始めたいので五村外の神社の神主さんに依頼をしたのだけれど、取り合えずこの五村周辺の神社は全滅だったそうだ。

 そして引き受けてくれた神主さんもいた様だったけれど、皆五村に足を踏み入れた途端に体調を崩してしまう。それかもう、ここは近付いてはいけない。と高田くんらに忠告する人さえいたようだ。


 けれど中には信心が足りないのか全く何の影響もない神主さんもいた。

 が、いざ地鎮祭を開始し、降神と呼ばれる儀式になるとこれでもかという怪奇現象が起きる。

 そうなるともう彼らの手には負えなくなってしまって、正武家の稀人の出番となるのだった。

 稀人は目覚めそうになる『何か』に引き寄せられた、玉彦曰く小物のものを祓っていた。


 多分、きっと、絶対に澄彦さんや玉彦にはこうなることがわかっていた。

 そこら辺の神主さんに鎮められるようなものであれば、正武家が何代にもわたって鈴白行脚をしてまで鎮めに赴く必要なんてないのだから。


「いつまで遊ぶつもりなのかしらねぇ。そもそも遊んでるの?」


「どう考えたって遊んでるでしょ。地鎮祭が出来ないなら一回ではいお終い。帰れって当主は言いそうじゃん。須藤だってオレだって出番が回ってくることはなかったはずなんだよ」


 言われてみればその通りなんだけど、澄彦さんは高田くんを抱き込みたがっている。

 だからそう簡単に帰れとは言わない。


 何度も何度も繰り返させて何をしたいのか私には分からなかった。

 そして隣の玉彦の考えも。




 そうこうして十一月。


 五村に初雪が降った。

 そして協和不動産の地鎮祭も来年までは行わないと連絡が入ったのだった。

 それはもう半分この計画は頓挫したと言っているようなものだった。



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