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6

 


 言い淀んだ叔父さんの説明はこうだった。


 五村の山の近くに大きな道路が出来るらしい。

 多分高速道路だろうというのが叔父さんの予想。

 そして不動産屋さんは近隣の土地を調べて、他の不動産が参入していない五村を見つけてしまった。


 本当は参入していないんじゃなくて出来ないんだけどさ。

 だって五村の土地はほぼ正武家の持ち物なのである。

 そこに住まう人たちは正武家と直接契約しているので、不動産屋さんは必要ない。

 新規開拓できると踏んだ不動産屋はここぞとばかりに乗り込んできたのは良いけれど、当てが外れてしまったに違いない。

 どこへ行っても大家は正武家様だと言われただろう。

 そして正武家を訪ねたくても、正武家の当主と面談をする為には予約を入れなければならない。

 しかも半年先まで埋まっている。

 ちなみにその半年の間にお役目がお休みの日があるけれど、そこは『休日』という予定なので、余程のことがない限り訪問は受けない。

 なので正武家と接触を図りたければ、半年前までに予約を入れなければならないのである。

 言ってしまえば半年はもう既にスケジュールが決まっている。


「そうか。それで上守か」


「はい……」


「どういうことよ」


 全く話が見えてこない私に、夏子さんが教えてくれた。


「上守は神社とか裏山とかあるでしょう? そこって上守の土地なのよ」


「え、正武家じゃないの?」


「私も最近までそう思っていたんだけど、違ったのよねぇ」


「上守や御門森、神社仏閣などは正武家の手を離れている」


「どうして?」


「彼らが五村の地から離れないとなっているからだ。もし離れる際には正武家に戻すことになっている」


「そう、なんだ……」


 この五村には私が知らないことがまだまだ沢山あることを実感する。


「で、どこで知ったのかうちが土地持ちってことを知った不動産屋が来るようになっちゃってね」


 よっこらせと立ち上がった夏子さんが戸棚を漁って出した名刺を玉彦が受け取る。

 私は横から覗き込んで、目が点になった。


『営業部 高田史央』


 私の同級生の名前だった。







 私がお祖父ちゃんの家に泊まるとき。

 割り当てられる部屋は客間ではなく、お父さんが使っていた部屋だ。

 ちなみにまだ玉彦と籍を入れていない時は、私はお父さんの部屋、玉彦は客間だった。

 正直お屋敷では一緒に寝ていたけど、お祖父ちゃんにはそれを言うことは出来ず、玉彦もそれが当たり前だとでもいうように従っていた。

 一番駄々を捏ねて文句を言うのは自分のくせして、外面だけは一人前で常識のある玉彦様だからムカつく。


 大きなお布団を敷いて二人で横になる。

 私は着替えを常備してあるけど、玉彦は叔父さんから借りた白いTシャツにパンツ一枚。

 いつも寝間着の玉彦だから、こうした格好でいるのは凄く新鮮だ。

 ごろごろ転がってぴっとりくっ付いて、両腕を枕にしていた玉彦に添う。


 そして今日の午前中の話を玉彦にもしておいた。

 クラス会の話、高田くんの話。

 すると玉彦は目を閉じて長い睫毛を震わせて溜息を吐いた。


「そういうことか……」


「え?」


「以前お前には『ある』と言っただろう」


「うん……」


「詳しいことは話せぬが、どうやら神守というのは物事の目になり易いようなのだ」


「目って、神守の『眼』?」


「そうではない。強いて言うなれば『台風の目』」


「なっ……!」


 起き上がった私の二の腕を引いた玉彦は腕に抱き込む。


「暴走するなと忠告を繰り返していたが、神守がそういう特性ならば比和子に言い聞かせても無駄なのだと父上と決着がついた」


「失礼ね」


「神守というのは正武家に尽力する様になっている。我らの手を煩わせぬように些末事を己らで引き受けるように、そうある流れを持っているようなのだ」


「それで?」


「よって比和子の周りにはそういう流れがある。お前が通常の神守であったならば、良かったのだが正武家の嫁なのでな……」


「……私が些末事を始末する前に正武家が気がついてしまって、巻き込まれちゃうってことね……」


「左様。何とも面倒な流れよ」


 玉彦はそう言って私を抱く腕に力を込める。

 だからこそ玉彦が私の夫になったのだと以前言っていたのはそういうことなんだ。

 本当にもう五村の意思ってやつはどこまで正武家に肩入れするんだろう。

 きっと神守が女性だからそうしたんだろうなってことは想像がついた。



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