第八章『高田史央』
高田史央くん。
彼は爽やか好青年で、小中高と私と同じ学校だった。
中学校では生徒会で一緒だったし、高校生になってからは席がお隣さんだった。
ふわりとした栗色の髪で、くっきり二重。
甘い顔に優しい言動で女子たちはみんな彼が好きだった。
そしてそんな彼は、私のことが大好きだった。
小学校の時に告白をされても『好きな人がいるから』って断って、中学一年生の夏休み以降は『将来を約束した相手がいるから』って断っていたのである。
今にして思っても、なぜあんなモテ男が私のことなんかをずっと好きだったのか謎である。
親友の小町目当てで近寄ってくる男子もいた中で、彼は違っていて好感は持っていたけどそれは恋愛対象ではなかった。
高校二年生の夏休みになり私が転校して、彼はどう思っただろうか。
小町が言うには、私が転校したのは家庭の事情となっていたらしく、彼は酷く心配していたと教えてくれた。
何度か連絡もくれていたけど、私がお屋敷に居るプライベートな時間は隣に玉彦がいることがほとんどだったので、あまり返事は出来なかった。
そのうち三年生になって受験勉強も始まり、私に至っては二年の秋口にスマホを折られる事件があったので番号も変わってしまい、彼とはそれきりになってしまっていた。
夏も終わりに近づきつつある、八月下旬。
私はお祖父ちゃんの家に毎日の日課である玉子を貰いに一人で来ていた。
そこで高校時代の高田くんを思い出すことになったのは、夏子さんから渡されたハガキのせいだった。
私が住んでいた通山市の実家の家は、まだそこにある。
もう人が住んでいないけれど、私にとっては生まれ育った実家だったし、売ったり人に貸すことはせずにそのままにしてある。
家の維持には人が住んでいなくても色々とお金が掛かるけど、そこは澄彦さんがというか正武家が責任を持って管理してくれているので安心だ。
月に一度か二か月に一度、私か夏子さんがそこへ行ってお手入れをしているのだけど、昨日実家へ行ってくれた夏子さんがポストに入っていた高校のクラス会のお知らせのハガキを持って帰って来た。
私が前回訪れてすぐ届いていたようで、クラス会のお知らせは二か月後に私の手に届いた。
開催の日付を確認するとお盆の時期で、もう二週間も過ぎてしまっていた。
こういう行事があると小町から『行く~?』とメールが来そうなものだけど、彼女は今守くんを追い掛けて北海道に行ってしまっていたので、多分私同様ハガキの存在にすら気が付いていないのだろう。
「タイミングが悪かったわよねー」
夏子さんは縁側に運んできたお茶を私に手渡して、手元のハガキを覗き込んだ。
「んー、でもどっちにしても行けなかったしね。お父さんたちのお盆もあったしさ」
「……そうねー」
昨年亡くなった私の家族のお盆は、お祖父ちゃんの家でみんなで迎えた。
そこに私の旦那様である玉彦がいるのは良いのだけど、何故か澄彦さんも一緒にいて、お盆だから光一朗を呼び出します! とか言っちゃってみんなで制止した。
せっかく成仏しているのだから呼び出すな、とお祖父ちゃんは結構本気で止めていた。
けどそもそもお盆はそういう人たちが帰って来るのを迎えるはずの行事だと思うんだけどさ。
「それに高校のクラス会って言っても、一年半しかいなかったし。卒業したのは美山高校だから何ていうか濃い思い出って美山のみんなとなんだよねー」
ハガキに目を落とすと、幹事の名前は高田くんと杉崎さんだった。
返信先の住所は高田くんで電話番号やアドレスも書かれている。
出席するとは限らないけど今後こういうお知らせが実家に届くと擦れ違いになってしまうので、あとで連絡先の変更を高田くんに知らせておこうと思った。




