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「今ね、学校で流行ってるんだってー」


「くだらん」


「とか言いつつ玉彦様だって高一の時、巻き込まれてたよね」


 肩を揺らす作務衣姿の須藤くんに視線を投げかけると、同じタイミングで玉彦の鋭い視線も彼に刺さった。


「マジで? 次代、そんなことするの?」


 敢えて空気を読まない多門は楽し気に須藤くんに先を促す。

 何となく玉彦に背を向けた須藤くんは私を見ながら手元のボウルから小鉢にほうれん草の和え物を盛り付ける。


「部活が終わってさ教室に忘れもの取りに戻ったら、家政科の教室から悲鳴が上がってね。玉彦様と豹馬と見に行ったんだよ。そしたらこっくりさんしてたわけ」


「まさか亜由美ちゃんたちじゃないよね?」


「うん。流石に弓場さんはそんなことしないよ。別の女の子たち。で、指が離れないって言うから玉彦様が十円玉を押さえてさ、豹馬と僕も押さえて女の子たちと交代したんだ」


「交代なんて出来るの?」


「出来ちゃったんだよ。で、女の子たちを先に帰して、さぁどうするかと」


「ちょっと待ってよ。その話、おかしくない? だって玉彦が『触れた』んでしょう?」


 そう、玉彦曰く小物の禍は彼に触れただけで霧散してしまうのだ。

 玉彦に触れても存在できるとなると、それだけでも厄介なモノだということになる。

 しかも視える豹馬くんもいて何も視えなかったんだろうか。


「そう、触れたんだよ。で、そこからね僕たちは数時間も動けなくなってしまったんだ。玉彦様のせいで」


「なにそれ」


 玉彦に目をやると忌々し気に須藤くんを睨み付けて、余計なことをと口を尖らせていた。


「どうして玉彦のせいなの?」


「玉彦様にも僕にも視えていなかったんだけどね、豹馬が言うには十円玉からずーっと白い煙が出続けてたらしいよ」


「金、特に硬貨は人の念が籠りやすい。紙幣の様に焼かれもせず、何年も人の手を渡る。時には火葬に使われることもあるだろう。通常ならば問題ないが、何らかの事情で刺激を与えられた硬貨は時として禍を吐き出す」


「それがこっくりさんの儀式だったてこと?」


「あの時はそうなるな。長時間無意識に力が消費されて酷い目に遭った」


 つまり十円玉に宿った小さな禍たちを無意識に払い続けて手が離れなかったと。

 その光景を思い浮かべて笑ってしまった。

 だって男子三人、しかも夜中まで十円玉に人差し指を置いている光景ってシュール過ぎる。


「でね、その時豹馬がせっかくだから何か聞いてみようぜって言い出してさ」


「止めろ、須藤」


「えーどうしてさー。こっくりさんに上守さんは何をしてますかって聞いたんだよ」


「どうしてそんなこと」


「だって村の連中の行動って大体予想付くしさ。それにずっと上守さんが村に来ないから気になってたんだよ」


「まぁ……それはそうね。で、こっくりさんは何て答えたの?」


「お風呂。歌」


「それ多分当たってるわよ! こっくりさん凄いじゃないの!」


「だからさ、実際正武家のお風呂で上守さんが歌いだした時、玉彦様の部屋で皆で笑ったんだよ」


 確かに高二の時、豹馬くんと須藤くんに十一月まで美山高校に居て欲しいと打診されたあの夜。

 私の歌のせいで笑って話にならなかったと玉彦は言っていた。

 それはこういう事だったんだ。

 こっくりさんが言い当てたことと私が本当にお風呂で歌う人間なんだとわかって。


「こっくりさん、侮れないわね」


 だったら私もしてみたい。との考えを見透かす様に多門は私を流し見る。


「駄目だよ。ほんと低級霊なんだからね。比和子ちゃんはトラブルメーカーなんだから絶対止めなよ」


「わ、わかってるわよ」


「どもる比和子の言葉は信用ならぬ」


「そんなことないもん!」


「すぐムキになるのも信用ならぬ」


「……馬鹿玉め」


 私が顔を背けて呟くと玉彦の大きな手が頭をガシッと鷲掴みにする。

 恐る恐る玉彦を見ると、引き攣って胡散臭いくらいの満面の笑みだった。


「よいか、絶対に関わるなよ」


「はい……」


 このシチュエーション、どこかでデジャヴが……。

 私は蛇に睨まれた蛙のように頷くしかなかった。



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