表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/219

4



「豹馬くんにはその話してみた?」


「んー、それとなくしてみたんよ。そしたら気にするなって言うん」


「まぁ、言いそうだよね……」


 玉彦と、というか正武家との付き合いで私は学んだことがある。

 それは上にいる彼らが下々に気を遣うなと言っても効果がないことだ。

 馬鹿正直にはいそうですかとはいかない。

 私の両親だってそうだ。

 娘が正武家のお屋敷にお世話になるということは、生活費が掛かる。

 それに学費だって色々とある。

 春休みに通山の家に帰ったら、お母さんからその辺の話を聞いて私は青ざめた。

 私が正武家に居候させてもらっている間の諸々の費用は全て、玉彦持ちだったのである。

 最初は親である澄彦さんが負担する話だったらしいんだけど、母屋でのことなので玉彦が負担すると言い出した。

 前に玉彦はお役目で頂いた稼ぎは全部使わずに残っていると話していたけど、結婚もしていない私を養うって話がおかしい。

 なのでお父さんは仕送りとして何度か生活費などを送ったみたいなんだけど、全て玉彦が突っぱねてしまった。

 頑固にも程がある。

 それでも流石にお小遣いを玉彦から貰う訳にはいかないって私が説得をしてその分だけは毎月振り込まれるけど、いつも玉彦が一緒なので使うことがなかった。

 一応私は正武家にお嫁に行くことが決まっているし、正武家がそれで良いと言ってるわけだし、そもそも正武家の内情が村民に漏れることがない。

 なのでお祖父ちゃんたちが村民から非難を受けることはない。

 でも亜由美ちゃんちはそうもいかない。

 二人で一緒に居ればそういう仲なのだなって村の人たちは思うし、興味津々で探ってくる。

 で、当人たちが知らないところでリサーチされた信憑性の高い噂が流れてしまうのだ。


「手土産持ってたフリして行けばいいんじゃないかな?」


 無い知恵を絞って出した私の答えに、亜由美ちゃんは苦笑いをした。

 村民の反応はともかく、御門森に失礼があってはいけないということが前提のようだ。

 だったら。


「豹馬くんにずっと亜由美ちゃんの家に来てもらえばいいんじゃないかな?」


「豹馬くん、受験生なんよ。それしたら女が誑かしてるって言われるんよ……。何年か前にそれで嫌な思いをしたカップルが居るんよ……」


 何ていう事だ。

 だったら何をどうしたって現状を維持するしかない。

 でもそうすると亜由美ちゃんちの負担がなぁ……。

 と、そこまで考えてふと思う。

 豹馬くんのお兄さんの南天さんの場合はどうだったのかなって。

 南天さんとお付き合いをして結婚をした紗恵さんはどうしていたんだろう。

 てゆーか、紗恵さんって五村の出身なのかな。

 あまり話をする機会が無いので彼女について知っていることは少ない。


「この話、急ぐ?」


「そんなに急いどらんけど」


「わかった。ちょっと考えるから明日か明後日まで待っててよ。いい案考えるから」


 お屋敷に帰ったら南天さんに聞いてみよう。

 もしかするとそこに突破口があるかもしれない。


 頭の中で質問することを考えている真剣な私に、亜由美ちゃんは追加のお茶をグラスに注いでくれた。

 正直な話、友達のこんな話に何をそんなに真剣に考えるのかと思われるけど、私にとっては重要だ。

 だって豹馬くんは玉彦の稀人で一生付き合うことになる。

 だから豹馬くんと亜由美ちゃんがもし結婚したら、自動的に私と亜由美ちゃんも一生のお付き合いだ。

 彼女が鈴白で他の誰かと結婚しても友達関係は続くだろうけど、距離感が違ってくる。

 だから少なからず私の問題でもある。と考えた。


 それから二人で那奈曰くガールズトークを繰り広げた私たちは、お互いの彼氏の文句や不満などを面白おかしく語り合った。

 私が知らない豹馬くんの子供っぽい一面などを聞いて笑い転げていると、亜由美ちゃんは涙目の私に急に神妙な顔をする。

 流石に転げまわって彼氏のことを笑ってしまった事を反省しつつ正座する。

 すると亜由美ちゃんは自分の部屋なのに周りを見渡して囁く。


「比和子ちゃん。那奈ちんも言ってたけど新田さんには本当に気を付けた方が良いよ」


 いきなり話題が切り替わったので一瞬新田さん? と思ってしまった。

 転校生の新田さんのことだと直ぐにわかったけど、亜由美ちゃんまでこんなに警戒するだなんて過去に何かあったんだろうか。


「どうして? 玉彦に寄ってくるってこと?」


 彼女が過去に玉彦にお世話になっていたことや、那奈との柵を教えてくれた亜由美ちゃんだったけど、まだ私に話をしていないことがあったようで、私たちは何故か膝を突き合わせて見つめ合う。


「玉様とか豹馬くんたち男子は知らんだろうけど、新田さんかなりあくどいんよ」


「あくどい?」


 聞き返したら亜由美ちゃんはゆっくりと目を閉じて腕組みをして頷く。


「男子と女子の前で態度が違うん。だから那奈ちんと衝突したんよ」


「うわぁ~……」


 偶にそういう女子がいる。

 美山では見かけたことがなかったけど、通山では偶にいた。

 でもそういう女子は面倒なので近付かない様にしていたし、何よりもそんな女子が身近に居ようものなら小町の毒舌の餌食になっていた。

 小町と那奈は何となく性格が似ているとこがあるから、那奈は新田さんに毒を振り撒いたんだろう。

 でも亜由美ちゃんの様子を見ていると那奈の毒はあんまり新田さんには効果が無かったようだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ