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ケイナ  作者: 一水 けんせい
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第十八話 転送

―― 家庭教師が来た日から一週間が過ぎた……

前回のケイゴの不可思議な行動から一ケ月。テレジアの監視は続いていた。ケイゴからグルグルと呼んでいた包みを見ようとしたが失敗に終わったテレジアだったが、包みを隠滅した事で疑惑が確信に変わっていた……


何故、隠滅する必要があるのか?それは見せられないからだろう。誰もがそう答えるだろう。ここ数日テレジアは家事をすると居間で軽い睡眠を取っている、夜行動するであろうケイゴの監視をしているからだ。そんなテレジアを心配そうに見ていたケイナ、テレジアが寝ている時はなるべく声をかけないでいた。


ケイナは表に出て花に水を撒きはじめる。ケイゴは相変わらず馬小屋を作っていた。一体、何時になったら完成するのだろう……


ケイゴは、作業を止めてケイナに近づき

「今晩 帰るから…… すぐ戻ってくるからな」

「……すぐ帰ってくるのか?」

「ああ ケイナが寝てる間に行って帰ってくる 起きたらちゃんと俺は居るよ」

「……」


ケイナは黙った。恐らく着いて行きたいのだろう……


―― 晩飯

「ケイナちゃん ケイゴ ご飯よ」

「ああ 今行く」


ケイナは井戸から汲んである水で手を洗ってから椅子に座って皆が揃うのを待っていた。すぐにでも食べたいのだろうがケイゴとテレジアがそうしてるのを見て覚えたのだった。ケイゴが来ないと食べれない……ケイナは玄関まで行き大きな声で叫ぶ


「ケイゴ! ご飯! 早く!」

テレジアは、椅子に座り笑ってみている。ケイゴが玄関に来るとケイナは文句を言う。


「ケイゴ遅い! 早く!」

ケイゴの手を引っ張り台所に連れて行こうとする。ケイゴもケイナの行動の意味がわかるので笑いそうになっていた。


「はいはい 手を洗うから待っててな」

ケイゴは手を洗い、ようやく椅子に座った。


「いただきます!」

「はい いただきます」

「いただきます」


ケイナが一番にコロッケを食べる。それを見ながらケイゴとテレジアも食事をはじめた。


「おいしい?」

「うん! テレジア上手!」


黙々と食べているケイナに時折、テレジアは話しかけてはニッコリしている。食事を終えるとテレジアとケイナは風呂に入る。ケイナはほとんどケイゴとは風呂に入らなくなっていた……理由は簡単、ケイゴは念入りに綺麗にしてくれないからだ。風呂から出るとテレジアが髪を乾かし櫛でとかしてくれる、ケイナのお気に入りだ。


ケイゴは風呂から上がると氷を割ってカーキーをロックで二~三杯飲んでから寝るようになっていた。テレジアも普段は水割り一~二杯ケイナの話を二人でしながら飲んでいた。しかし、今夜のケイゴは一杯しか飲まず寝るという……


(今夜ね……)


「おやすみ ケイナ… 早く寝ろよ」

「おやすみ……」

「……おやすみなさい」

ケイゴはそう言うと自分の部屋に入っていった。テレジアとケイナは部屋に入りベッドに潜る。


「ケイナちゃん おやすみ」

「……おやすみなさい」

テレジアはケイナが何時もより元気が無いのに気がついた。


「どうしたの?ケイナちゃん…… 何があったの?」

テレジアはやさしくケイナに尋ねた。ケイナは首を振るだけで何も言わない。その目は涙を我慢して、テレジアにバレないように必死に目を瞑る。


「……ケイゴが出掛けるのね?」

「……なんで知ってるの? テレジアは知ってるの?」

「……ケイナちゃん 知っているのね? ケイゴは何処に向かうの?」


ケイナはケイゴが何処に行くのかは知らないと言う……ただ、『異世界』に行くとだけ聞いているというのだ。


「……『異世界』何処なの一体……ケイゴは何者なの?……」

しばらく黙るテレジア……考えがまとまったのか


「ケイナちゃん ケイゴの行き先知りたい?」

「……うん」

「……着いて行きましょう 行く?」

「行く!」


二人は寝たふりをしてケイゴが動くのを待った。深夜二時頃だろう…ケイゴの部屋から微かに物音がする。部屋からこっそり出て行き玄関から靴を持って部屋に戻った。


「……今よ 部屋の前で隠れてるのよ」

気づかれないように部屋を抜け出した二人は、ケイゴの部屋から見えない壁際にへばり付き顔だけ出してケイゴの部屋を覗いた。何時の間にか元に戻されていた、薄い鉄板をずらしてケイゴは指輪と同じ模様の壁に、左手に嵌めた指輪を翳した。


次の瞬間、指輪と指輪の模様から眩しい光が出はじめた。続けてケイゴの体も光りはじめてきた。


「今よ! ケイナちゃん ケイゴに抱きついて!」

二人は、ケイゴの部屋に押し入りケイゴの腕にしがみついた。


「ちょ!? お前らどうして! こら離れろ!」

「ケイナちゃん! 絶対離しちゃ駄目よ!」

「う うん!」


光はそのまま二人の体も包むと、目の前が真っ暗になった……どれくらい経ったのだろう……テレジアは一瞬、気を失っていたようだ。


「ケイナちゃん! いる?」

「うん! ケイゴの腕にぎってるよ!」

「ケイゴ! ケイゴいるの?」

「……いるよ ……やる事が無茶苦茶だな……」

「ここは何処よ?」

「……『ロッカー』だよ…」

「『ロッカー』?」

「おーい! 長島さん! 開けてくれー! 緊急事態だ…」

「……なんだ 今日は騒がしいな 開かんのか?」

「ああ! 大変な事になっている……」

「何が大変じゃ? ほれっ」


ガチャ

ガタガタドタン!

「……なっ なんじゃこりゃ!? ケイゴ!」

「……はあ… 長島さん……煙草くれ…」

「……あっ ああ…」

「ちょっとケイゴ! どういう事かきちんと説明しなさいよ!」

「……ちょっと待ってくれ どうしたらいいか考えるわって…寒っ」

「ケイゴ 表見てみろ……」

「ああ…… 雪か…寒いわな」

「…雪?」

「…ゆき?」


表を見ると、暗い空から真っ白い雪が降っていた……そして、用務員室は可笑しな空気になっていた……

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