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第97話 隠し事

 毎日カミラを観察していると、気付いた事がいくつかある。まず彼女は、仕事の節目で近くにいる僕、レミリア、プラムの様子を必ず確認している。これはもう意識的ではない、自然とそうしてるんだと思う。


 手が止まった瞬間に周りを見渡して、近くにいたのがレミリアなら、それを4、5秒観察、そして作業に戻る。


 恐らくこの時に見たレミリアと、その後のいつかに改めて確認したときのレミリアとの差分を取っているんだ。凄まじい観察能力。


 だから怪我や疲労に敏感で、誰かが怪我をしていたらすぐにフォローに行ってくれるし、全員のコンディションを把握してるから、イレギュラー時でも立ち位置を誤らない。


 これは観察してないと気付けないレベルのさり気なさ。日常からこれをしているカミラの技術を、ちょっと真似出来る気がしない。


 あーあ、観察して分かった事が真似出来ないって事実だもんな、本当に凄いや。


 でもなんか今日は……姿を消しがちだな。


 気が付いたら良く見失う。いつもの事の様な気もするんだけど、こう丁寧に観察していると違和感が……。


 ん? もしかして、何かを隠してる? 次に近くに来た時にでも聞いてみようかな。





 ______





「カミラ、ちょっと良い?」

「……何?」


 うーん、何だろう。違和感はあるんだけど、何が違うのかが……。


「……ケホ」

「ん? もしかして体調……悪いの?」

「……全然、平気」


 あー、成る程。ちょっと風邪気味とか、なのかな。だから移さない様に極力裏側で仕事して、必要な時だけしか表に出なかったのか。そこか、違和感は。


 僕の魔力は本当に極僅かしかカミラに預けてないから、それ程作用もしないからね。


 ちょっと調べてみるか。


「おいで、ほらここに」

「……あぅ、今日は、マズい」

「バカ、ちょっと体調悪いんだろ?」

「……ちょっと、だけ」


 移さない様に気を遣ってた訳か。やれやれこの子は本当にもう……。僕はカミラを膝の上に座らせて後ろからお腹にソッと手を当てる。


「ちょっと調べてみるからじっとしてて」

「……了解」


 うーん、風邪だな。普通に体調崩してるだけっぽい。これなら少し手を入れれば明日には完治するね、問題ない。


「うん、大丈夫。きっと明日には良くなるよ」

「……それなら、良かった」


 ちょっとホッとした顔を見せるカミラ。周りにかける迷惑ばっかり考えちゃって、まったく。自分の事もちゃんと心配してくれなきゃ。


「今度からは、ちゃんと教えてよ?」

「あぅぅ……、でも……」

「教えてよ?」

「……了解」


 ちょっと涙目で観念した表情を見せるカミラ。

 次はちゃんと言ってくれるといいんだけどね。

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