第94話 サプライズの穴
「ではいただきます」
「「「いただきまーす」」」
晩御飯をみんなで囲むいつもの風景。今日のご飯はちょっとだけ奮発して骨つき肉を買ってスペアリブ。これをプラムが味噌ベースのタレで下味を付けてくれて、綺麗に焼いてくれて。これがジューシーで味もしっかりしてて、ご飯が進む進む。
サラダも何かよく分からないドレッシングがかかっていて、まるで外食してるかの様な雰囲気のサラダになってしまっている。サラダ凄く美味しい。
「……肉の味、完璧」
「でしょ! レミリアさんに聞きながら頑張ったんだよ!」
「……これは、最高」
「でも殆どプラムちゃんが調整してくれたから、私はこんなイメージって事しか伝えてませんよ?」
「うーん、まだそのイメージが難しいんだよね」
「ふふ、私はレパートリーには自信があります!」
「いいなー、何でそんなに知ってるの?」
これ、この味付けを殆どプラムが? 凄いな、もうイメージだけでここまで再現出来るんだ。肉は急遽用意したのにここまで合わせてくれるもんなぁ。
あ、急遽用意した理由は、勿論カミラが食べたがってたからなんだけどね。
「私はいつもお客様とお話ししてますからね」
「そっかー、私まだお客様と話すの慣れないんだよね……」
「……私も、同意」
レミリアはみんなのアイドルだからね。若い人からそこそこの方までみんなレミリアが大好きだもん。料理の話も詳しい人が何人かいるから、その人とはいつもその話題で会話してて。
で、そこから吸収してた訳だ。抜け目ないなぁ。
「聞いて頂ければ、もう作るのはプラムちゃんの方が上手なので、それで完璧ですね!」
「まだレミリアさん程じゃないよ? レミリアさん、細かい組み合わせまで上手だから、自分のセンスの無さが嫌になるよ」
「組み合わせは難しいですよね、でも知ってたら簡単なんですよ?」
「そうなの?」
「合う物は大体決まってるので、慣れれば簡単です!」
「うーん、よし、頑張る!」
そんなこんなで我が家は今日も通常営業。ご飯も食べ終わって皿を下げて後片付け。で、終わったらお話しして解散だけど、今日はちょっと……ね?
「ねぇみんな、今日はちょっと渡したい物があってさ」
「渡したい物……ですか?」
「なんだろ?」
「えっとね、これなんだ」
僕はポケットにしまってた紙袋を取り出して、その中身をテーブルの上に並べた。それは同じカラーの石の使われた三つの違うアクセサリー。
「うわー綺麗ですね!」
「これって……」
「そ、みんなでお揃いなんてどうかなってさ」
「良いんですか!?」
レミリアが凄く尻尾をパタパタしている……こういう時は本当に素直で可愛いよね。
「どれにしよっか?」
「プラムちゃんは髪が長いからこの髪留めが良いんじゃないですか? ほら!」
「……似合ってる」
「本当? 嬉しい!」
「……レミリアは、コレ」
「私はネックレスですかね? 確かにこれなら仕事中でも内に入れてしまえばいつも身につけてられますね!」
「……私は、コレ」
最後にカミラが腕輪をとって自身の腕につけた。うん、みんな似合ってるし、なんか家族って感じがしていいよね。
「……あれ? そう言えば」
「ん?」
「ご主人様の分がありません」
「えっ」
あれ? 僕の分?
「みんなでお揃いなんだから! あった方が良い!」
「そうですよ! 絶対必要です!」
「……これは、ミス」
あれれ? まさかこんな事になるなんて……。プラムまで抗議してくるとはね。うーん。
で、明日買いに行く事になりました。
まだまだ気が利かないなぁ。




