第92話 身近な人への相談
「いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます!」
今日もお店で仕事仕事。相変わらずお客様の来店が多く、有り難い日々を送らせて貰っている。最近ではあそこの医院でお通じが良くなった途端に身体が軽くなった! とか。あそこの医院に通い始めてから手先の痺れまで治った! とか。そんな噂が流れ始めている。うーん、やり過ぎてないか心配だけど、みんなが健康を実感してくれてるのは嬉しい限りだよね。
ただ時々、あそこの医院に通い始めてから運が無くなりました、なんて冗談めいて言う人までいるんだけど、無くなったのはそっちじゃないよね。ほんと、みんなに大切にして頂いてるとシミジミ感じるよ。
「……最近、良い顔」
「ん? おぉいつのまに。少しマシになってきたかな?」
ふと気が付いたら荷物を持ったカミラが隣に立っていた。この子の気配、凄く薄くてそれなりに訓練してた筈なのに良く出し抜かれるんだよなぁ。
多分、元々抜き足で動く事や気配を殺して何かをする事が多くて、その中で自然と磨かれてきた技術なんだろうね。そこにカミラ自身の天稟が加味されると、僕でも察知出来ない技術になると。この子は本当にセンス方面ではピカイチだね。
「……大分、マシ」
「マシか、まだダメ?」
「……ちょっと、違う」
うーん、バレてるなぁ。大分慣れては来たんだけど、回数こなしてるからどうしても後半はちょっとしんどい時が多いんだよね。週二回休んでてやっとだから、多分まだ上手く扱えてる訳ではないんだ。にしても良く分かるなぁ。
「えっと、そんなに分かりやすいかな?」
「……夜が、ダメ」
バレバレじゃん。完全に見抜かれてるね。……そうだ、ならちょっと聞いてみようかな。
「そしたらさ、どうしたら良いと思う?」
「……どうしたら?」
めちゃくちゃだよね、特異魔法の扱い方の相談を魔力のマの字も知らない子に相談してるんだから。あー、やっぱり疲れてるのかな。
「……多分、バランス」
「え、バランス?」
「……後半の方が、上手い」
「えっ」
あれ? そうなの? 段々と疲れてくるからダメだなぁこれ以上は本当にマズイと思いながら……あ。
た、確かに後半はより丁寧に消費を抑えて……。
「……逆に、すべき」
「な、成る程」
後半の神経を使った節約は前半に、後半はその細かい動作をある程度の感覚に任せつつも、節約された魔力で凌ぐって訳か。
それだと気持ちが全然違ってくるね。なんせ魔力が減ってくるとどうしても精神がやられてくるから、ネガティブになったりしちゃうから……そうかそれもマズイか。
あれー? まさかこんな直球のアドバイスを貰えるとは……。
「ありがとカミラ、ちょっと試してみるよ」
「……きっと、良くなる」
うーん、本当に不思議な子だなぁ。だからカミラにはつい頼っちゃうんだよね。何というか、凄いやつだよ。本気で尊敬してる。