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第90話 遠足は帰ってもまだ続く

「あぁ……幸せな時間だった……。もう最高過ぎて……力が出ないわ」

「そりゃあれだけのリアクションをずっと続けてたらそうなりますって」


 買い物後。三人で店を出てひとまず何となく歩き出す。マーベルさんの家も確かこっち側だったから多分問題ないよね。


「でもあんな可愛い姿をみて薄いリアクションとか無理よ、耐えられないわ」

「ふふ、買ってもらっちゃいました!」


 そう言いながら服を見せる様にその場でクルリと一回転して見せてくれるレミリア。スカートの裾がヒラヒラし、羽織った上着が優しく浮き上がる。うん、確かにこれは可愛いね。


「キャー! 超可愛い! このまま離れたくないー!」

「はぅぅ、あ、あの……マーベルさん苦しい……」

「いやよ、離さないわ! 離れるくらいならもう一着買いに服屋に……」

「もういいでしょ……」


 かなり長い時間選んでいた様に思う。待つのもなかなか大変だ。というか、離れられないなら離れなければいいんだよね?


「あぁレミリアちゃん可愛い過ぎる……」

「マーベルさんが選んでくれた服、私も大好きです!」

「れれレミリアちゃんが私にこ、告白を……!?」

「してません」


 ダメだ、なかなか話を切り出せないな……。この人本当にギルドの受付にいる人と同一人物なのだろうか……。なんか別人の様に緩いなぁ。ま、それだけ楽しんでくれたならこっちとしても嬉しいんだけどね。


 でも……。


「マーベルさん、今日はお出かけだったので、家にはプラムとカミラが留守番してるんですけどね」

「まぁそうよね」

「晩御飯、用意してくれてるんですよ」

「……うちは誰もいないからなぁ、帰ってから料理かぁ。なんか一気に現実が……」

「良かったら一緒に食べません?」

「夢はまだ終わってなかったのね!!?」


 僕の手を握り、キラキラした目で返事をするまでもなくこの話の答えを察せる雰囲気を醸し出しすマーベルさん。とっさに魔力を送りそうになったのを慌てて止めたのは秘密だ。まずい条件反射だよね。


「来て貰えますか?」

「行くわ、勿論行かせて貰うわ! レミリアちゃーん、一緒に帰りましょ!」

「晩御飯ご一緒出来るのですね! 今日はみんなで食べた方が楽しい晩御飯なのできっと楽しくなりますね!」

「そうなの? 晩御飯作らなきゃ地獄から一気にこの天国感。良い事尽くし過ぎて帰り道で何かに巻き込まれそうな気がするわね」

「……勿論、送っていきますよ」

「マーベルさん!」

「れれれレミリアちゃんが手を!? 握ってくれた!?」

「行きましょう!」

「最高過ぎて足に力が……」

「……置いて行きますよ?」


 そんなこんなで我が家でみんなで晩御飯。

 今日は確か手巻き寿司だったよね。

 ……ちょっと楽しみ。

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