第84話 植木鉢
「お、もう用意してたの?」
「ご主人様! 見て下さいこの可愛い植木鉢!」
凄くニコニコ顔で僕に植木鉢を差し出してくるレミリア。見れば同じヤツが3つ。ひとまずこれを始めてみるって事なのかな?
「雰囲気もだけど、良いサイズだよね」
「そうなんです、バッチリなんです! これ実はマーベルさんに頂きました!」
ま、またマーベルさん。あの人本当にレミリアが好きだなぁ。僕よりレミリアの事知ってそう。
「この土はマーベルさんの知り合いの冒険者様が魔法で作ってくれた土らしくて、その人はランクがXクラスだから最高級よって教えてくれました!」
えぇ……。Xってそれもう上層部の承認がなかったらなれないレベルの人じゃないか。流石マーベルさんだなぁ。人脈が広いというか、何というか。
これはいい加減、お返しの機会を考える必要がありそうだな……。
「で、何を育てるの?」
「ナスとトマトとピーマンです!」
「お、それは収穫が楽しみだね」
「もう今からワクワクします!」
「よし! 一緒に移そうか!」
「良いんですか!?」
二人で植木鉢を囲んで、これをやってあれをやってとレミリアに教わりながら土を入れいく。何気ないひとときが凄く心地良い。
「これで大丈夫?」
「きっと美味しく育ってくれますね! ご主人様はナスがお好きなのでその植木鉢にはこれをどうぞ!」
「お、了解!」
渡された種を蒔いて、そして指示通りに終える。
「どうなるんだろねコレ、なんかワクワクしてきた」
「私なんてずっとワクワクしっぱなしです!」
さっきまでより、何というか自分が少しでも関わった事で何故かナスの植木鉢に愛着が湧いてしまっている。こいつなんか可愛いな。成長が楽しみになってきた。
「どこにおいておく?」
「陽当たりのいい場所にします!」
「よーし、いっしょに運ぶよ」
「では行きましょう!」
二人で植木鉢を運んで、ここが良いかなと場所を選んで設置して。
「いつ芽が出るのかな?」
「ふふ、気が早いですよご主人様! のんびり待ってあげないと、この子たちも困っちゃいます!」
「そうだよね、ついさ」
「私も、早く芽が出たら良いなって思ってます!」
二人でまだ何もなっていない土だけの植木鉢を眺めて、幸せを感じる。
まさか土を見てこんな気分になるとはね。同じ物でも、誰と見るのかでこんなに違うものなんだって、凄く噛み締めてる。あーあ、芽も早く出て欲しいけど。
それ以上に、芽が出た時のレミリアの顔が早く見たいな。