第80話 遅れ過ぎたヒーロー
「いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます!」
「悪いけどまた頼むわ、俺っち今日は急いでっからまた帰りに寄るってナビリスに伝えて貰えねぇかな?」
「あっ! えっと……ライバック様ですね!」
「嬉しいねぇ、名前覚えててくれたのか」
「勿論でふ!」
「噛んでる辺りも可愛くてグッド!」
「はぅ、いや、それは聞き流して下さい……」
「それより……やっぱ前は体調悪かったよな?」
「あぅ、それもバレてましたか」
「まぁ内々の事だから首は突っ込まなかったけどさ、無理すんじゃねぇぞ? ナビリスの奴、案外鈍感だからよ」
「……ふふ、そうですね! ご心配をおかけしました、でも元気になったので!」
「そりゃ良かった。おっといけねぇ、また後でくっからよ!」
「はい! お伝えしておきます!」
入り口から聞こえてくる会話、珍しく変わった声だったのですぐに分かった。ライバックさんが来てくれたみたいだ。
「ご主人様、ライバック様が!」
「みたいだね、待ってるの?」
「いえ、また後でって!」
「ん、了解」
あの人ほんといつもバタバタしてるからなぁ。でも今は僕も忙しいし、後で来てくれるって言ってるなら多分営業後、かな?
多分連絡を残した件だね、変に心配させちゃっただろうから、ちゃんと謝らないと。
ま、なんせ夜になってから、だね。
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「すまねぇ遅くなっちまった! まだ入って大丈夫か?」
「あ、ライバック様!」
「様とかいらねーよ。ライちゃんとかでいいんだぜ?」
「ライバックさん!」
「おーおーつれないねぇ、まぁそこも含めて可愛いお嬢さんだ。さて、ナビリスの奴は?」
「奥でお待ちです、どうぞ!」
「失礼するぜ。お、ナビリス待たせたな!」
「お疲れ様です、ライバックさん」
扉から入って来たのはいつもと同じ雰囲気のライバックさん。緑の髪でボサボサ頭、なのにイケメンでスラッとスマートな立ち振る舞い。相変わらずだね。
「連絡貰ってたのによ、悪かったな」
「いえ、こちらも急でしたし、それにライバックさんが忙しいのは承知の上で無理を言いましたので」
「まぁ確かにあの時は魔界にいたな、今回はソルダートに直接頼まれたから断れなくてな。連絡出来なくて悪い。あの野郎いつ間にか俺っちより強くなりやがって時々無茶言ってくっからよ」
「ソルダートさんは……国の要ですからね」
「今や剣神か、ハナッタレ小僧が偉くなったもんだ。それより用は何だったんだ?」
「えっと……」
僕は事を荒立てるべきではないと判断し、ここは嘘で誤魔化す事に。ライバックさんには悪いけど……流石にね。この人には勘付かれそうだし。
さてさて、どう説明しようか。