第78話 小さなスタート
「昨晩はどちらに行かれてたのですか?」
「あぁ、ちょっとお店が気になってね。特に何もなかったよ」
「そうでしたか、必要があればいつでも声をかけて下さいね! お供致します!」
「ありがとね、でも大丈夫だったから」
翌朝、レミリアにばっちりバレていた事が判明。この子意外と良く見てるんだよな……気をつけてないと。
ただ今はレミリアがどこにいるのか、という事については特に手に取る様にわかる。というのも彼女の中には常に僕の魔力が駐在しているからだ。
まだ幼い彼女の身体からは、相変わらず身体を蝕む麻痺性の毒が排出され続けている。成人薬などと言うその特殊な薬があれば必要な栄養か、或いは素養を網羅出来てそのまま解決するのだろうが、今回それは得られなかった。
故にいつまでも続くその毒の排出を、出る度に身体に無害な物へと変換するシステムを彼女の中に仕込んでいるという訳だ。
支配下においた毒の位置はかなり認識しやすい。これも何かの際には役に立つと判断してから、すぐにカミラとプラムにも健康装置として毒素変換機能の小さいものを設置しておいた。
これで物理的な異変にも対応出来るが、やはり過保護な気もするのでとても極小にし、かなり意識しなければ日常からは何を感じる事もない程度にしておいた。監視したい訳じゃないからね。
こういう技術的な方面はこれからも応用幅を増やしていきたいと思うが、なかなか難しいもので。今のところは大きく何かを変える、とはいかないね。追い追いって感じになるだろう。
「……今日は、プラム?」
「そうです! むしろ今日からプラムちゃんがお料理を頑張りたいそうです!」
「よ、よろしく」
今朝のご飯は普通に卵やハムなのだが、十分美味しそうに作ってくれている。が、やはり盛り付けや細かい配慮がまだレミリアに比べると僅かに弱い。だからきっとカミラも気付いたのだろう。レミリアは色んな事に器用だからね。
何事も挑戦、それがプラムの良い所だ。
「カミラちゃん、晩御飯なにか食べたい?」
「……麺類」
「うーん、何かあるかなぁ。ねぇレミリアさん?」
「そうですね、今日は少し温かいのでぶっかけたまご麺にしましょうか!」
「それ初めて! 何それ!」
「えっとですね、焼き卵とかハム、野菜を麺の上に並べて、全部をしっかり冷やしてから特製のタレをかけて作る単純な料理なのですが……」
「ふむふむ……」
「……晩御飯、楽しみ」
普段は口数も少ないプラムだけど、料理みたいな興味のあるジャンルだと凄く活き活きとしている。なんかキラキラした背景が見える様な感覚だね。
最初はあんなに不器用だったのに、もう包丁を扱うのも盛り付けもかなり慣れてきて、今は専らレパートリー増やしだもんな。
プラムは本当によく成長している。
今後が楽しみだ。