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第72話 いらっしゃいませ⑤ー6

 眼が覚めると、家の中にはもう誰も居ませんでした。

 みんなは今日もお仕事、お休みは私だけ。


 けれど、みんなには言ってませんでしたが、実は私結構元気になっているんです。先日までの不調が嘘の様に、身体の隅々まで感覚が蘇っています。不思議な感覚です。


 私には何が起こったのか良く分からないのですが、きっとご主人様が何か無茶をして下さったのだと思います。だって、もうご主人様が不安そうな顔をしていなかったから。


 あの人、本当はとても分かりやすい方なんですよね。不安な時は不安な顔を。大丈夫な時は大丈夫な顔をを。いつも優しいですけど、ご主人様の顔を見ればすぐに分かります。


 私はもう……大丈夫なんだと。


 お姉ちゃんの事は、ご主人様に聞かせて貰いました。いつかその時が来てしまうかもしれない危惧は常に頭の片隅にあったので、聞いた時は悲しかったけれど、もう負けたりしません。


 だってお姉ちゃんも、もしかしたら私の様な環境にいるかもしれない。それにそうじゃなかったとしても、私の身分ではお姉ちゃんの行方は追えないから。だから私は私に出来る事を、ここでやろうと思います。


 ナビリス医院のレミリア。私の名前がみんなに知って貰えれば、いつかお姉ちゃんの方から見つけてくれるかもしれない。


 それにこちらから探すというのは、ご主人様が既に動き始めてくれているらしいので、私に出来る事はそれくらいだけ。


 でもやれる事はやろう。それがみんなの為になるのなら、これからも頑張ろう。頑張り過ぎるとご主人様に怒られるので、ちゃんとやろう。時々は……気を抜く様に、ご主人様に余計な気遣いをさせない為にも。


 ……だから、今日はこっそりお店に行ってみようと思うのです。こんな時間に仕事ではなく、まるでお客様の様に。


 本当にお客様になって迷惑をかけるつもりはありませんが、こうすればいつもと違う景色が見れるのかなと。少し、悪い子になっています。


 たまには……良いですよね?




 ______





「い、いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます」

「……プラム、慣れない」

「うぅ……急には無理だよー。何回も言ってるのになかなか……というかカミラちゃんも言ってよ!」

「……私は、裏方」

「ズルイなぁーもう」


 お店の入り口からこっそり中を覗くと、プラムちゃんが受け付けをしていました。プラムちゃん、最初は本当に何も出来なくてとても苦労をされてましたが、毎日一生懸命の良い子なので少しずつ良くなって。


 すっかり私の代わりが出来るようになってしまいました。嬉しいけれど……少し寂しいですね。


「……レミリア、大丈夫?」

「うわっ!?」


 あれ? さっきまでプラムちゃんと話してた筈のカミラちゃんが……後ろから。びっくりした……。


「あれ? カミラちゃん今あっちに居ませんでした?」

「……仕事、山積み」

「で、ですよね。すみません」

「……休むのが、仕事」

「ふふ、ありがとうございます。そろそろ私も働きますよ!」

「……無理は、禁物」

「いつもありがとうございます。あ、私がいる事、内緒にしててくれませんか?」

「……たまには、アリ」

「ありがとうございます!」


 いそいそと仕事を再開するカミラちゃん。やっぱり大丈夫とは言ってくれていても、大変は大変ですよね。


 えっと、スイートルーム用の出口から入って、……あ。ご主人様を見つけました! 忙しそうに仕事をされてますね。うーん、さて。これからどう……。


「レミリア!?」

「!!?」


 あ、あれ? すぐバレてしまいました。


「あ、えっと、おはようございます」

「動いていて大丈夫なのか?」

「はい! お陰様で!」

「……今度は大丈夫そうだね」

「あぅ……嘘じゃありません」

「いいや、レミリアはすぐ無理をするからね。もうレミリアの体調に関してはそう簡単には信じないよ?」


 うっ、確かに嘘で隠してばかりでした。


「でも、今日は本当に大丈夫みたいだね」


 あれ? その割にはすぐ信じて頂けましたね。良かった……んですよね?


「今日はさ、マーベルさんがこの後レミリアへの差し入れを持って来るって言ってたからそろそろ来ると思うよ? 入り口で迎えてあげてくれる?」

「え? そうなんですか? 分かりました!」


 ご主人様に頭を撫でられて、私は受け付けへ移動です。サプライズとは言ってもご主人様やカミラちゃんプラムちゃんとは毎日家では会ってますからね。余り驚かれませんでした。ちょっと残念。


 でもマーベルさんにも今回は沢山ご迷惑をお掛けしましたし。ちゃんとお礼、言わなきゃですね!


「プラムちゃん、お疲れ様!」

「レミリアさん!? 動いても大丈夫なの!?」


 ふふ、結局プラムちゃんが一番驚いてくれましたね。カミラちゃんなんて逆ドッキリですよ? もう本当に流石としか言えません。


「大丈夫! ほら、ね?」

「ちょ、まだ無茶はダメだからもう!」


 腕を振り回すとすぐにプラムちゃんに諌められてしまいました。プラムちゃん、本当に良い子ですね。


「どうしてここに?」

「えっと、そろそろマーベルさんが来るからってご主人様に!」

「成る程! 確かにそろそろな時間……あ!」


 噂をすれば、入り口からマーベルさんが。よーし、まずはお礼に元気な挨拶、送らせて頂きましょう!


「いらっしゃいませ! 順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます!」

「れれれれれれれレミリアちゃん!!?!?」

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