第7話 レミリアの真価
「いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます!」
元気な声でハツラツと仕事をこなしてくれるレミリア。初日とは思えない適応力の高さに舌を巻くばかりの状況だ。昨日はと言えば、帰り道で服を少しだけ購入、そのまま二人で家に帰って普通にご飯を食べて風呂に入って普通に寝た。何だろう、奴隷というより妹が増えた様な……何とも言えない感覚だ。当初の目的だった労働力としても申し分なく、今の所文句のつけようがない仕事ぶりを発揮してくれている。
「ふぅー沢山お客様がこられますね。これを一人でされてたのですか?」
「まぁ一ヶ月だけだけどね。それに無理なら無理で諦めてた所もあるし」
「少しでも力になれる様に頑張ります!」
「……えっと、よろしく」
こっちがタジタジになってしまう様な前向きさに、そろそろ疲れ始めるであろう二ヶ月目だというのに気持ちが上向きな気すらしてくる。末恐ろしいレミリア。
「あの……気付いた事を意見する事は大丈夫でふか?」
「……大丈夫だけど。噛んだね」
「あぅぅ、それは触れないで下さい……」
その場で顔を隠す様子が可愛らしい……じゃなくて。意見って何の事だろう。
「で、話は何かな?」
「えっと……今は診察後の御手洗いが数ヶ所あるだけなのですが、あそこを増設して優劣をつけ、有料制にするのは如何でしょう?」
「……え?」
何だって? 有料制? トイレに優劣をつける事で取れる所で更に取りにいくって事? ……そもそもトイレに優劣って?
「えっと……トイレの優劣のイメージがちょっと分かりにくいんだけど……」
「はい、便座をフカフカにしたり良い匂いがする様にしたり、ペーパーも質の良い物を一回使い切りで専用に用意したり、手洗いばを広くしたり……」
「待って待って、覚えきれないから」
「あ、ご、ごめんなさい……」
ションボリと耳をしなだらせるレミリア。尻尾がシュン……とか効果音を放ちそうなレベルで勢いを失った。凄く分かりやすいなーこの子。
「つまり、トイレはいずれ足りなくなるから、増設する際は優劣をつける事で顧客のニーズに合わせられる環境にするって事だよね」
「えっと……多分そうです」
「ニーズってのは要望って事ね」
「成る程……ありがとうございます!」
うーん、確かにそういうのも面白そう。満足度も変わってくるだろうし、きっと売り上げも変わってくるよね。……あれ? この子何なんだろ……。
「また気付いたら報告しますね! ご主人様!」
「……ありがと。よろしくね、レミリア」
うーん、凄く前向きで建設的な……。なんかこの子の効果ですぐに売り上げ増えそうだな、そう考えると……安い買い物だったのかな。
……いや、失礼だよね。
良い出会いだったと、そう思おう。