表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/190

第69話 いらっしゃいませ⑤ー3

 気がついたのはお料理の時でした。時々指先の感覚が分からなくなり、物を取り零す事があったのです。疲れてるのかな? とか、寝不足かな? とか、その頃には家族に対する信頼もあり日々が楽しかったので、深刻な問題として捉えたりしませんでした。


 でも、それが起こる間隔が段々近くなっていきました。そのせいでプラムちゃんにお料理を教えている時に取り零したり、動きにぎこちなさが出てしまったり。誰かの迷惑になるのは嫌だったので、上手に隠しながら生活してました。


 途中お店に来られたご主人様の昔の上司様が、私を視界に入れた後に二度見してきてドキッとしました。そしてジーっと見てくるのです。バレたんだろうか……私は大丈夫だから心配して欲しくないなと祈っていたのですが、どうやらバレてなかった様です。あの時は少しドキドキしちゃいました。


 毎日が凄く楽しくて、それを壊したくなくて。


 でも段々、隠せなくなっていって。


 そんな不安を煽る様に、カミラちゃんとプラムちゃんったら、とても怖い話をするんです。何なんですか黒い塊って。漠然としすぎていて、私の身体の動かない感覚が強い時にそれと出会ってしまったら……恐怖です。もう怖くなってしまって。一人で居られませんでした。


 そしてそれを恐る恐るご主人様に相談しに行きました。馬鹿だなー早く寝ろと、言われるとは思ってました。でも……少し話すだけでも落ち着きそうだったので行ってみました。するとまさかの事態です。ご主人様と一緒に寝る事になりました。


 おいで、と言ってくれたご主人様の言葉が暖か過ぎて言葉に詰まりました。そして、朝までご一緒させて頂いたのです。とっても安心しました。誰かに護られている感覚が凄く凄く優しくて。少し、泣きながら眠ってました。ご主人様には内緒です。


 だけどそんな中、私の身体はどんどん言う事を聞かなくなっていきました。遂にお皿を割ってしまったのです。本当に申し訳なくて、でも叱ったりしない優しい人なのは良く分かっていたので、余計に申し訳なくて。


 もう一度ちゃんと謝ろうと、またご主人様の元を訪ねました。でも本当は……ちょっと嘘なんです。動かなくなる身体が不安で怖くて。本当は、その黒い塊が私を食べているんじゃないかって。だから……ご主人様に、その……甘えたくて。ついお皿を言い訳に、訪ねてしまいました。


 きっとご主人様は優しいから……。と、すぐに思っていた通りの状況になりました。申し訳ありません、実は私、少し狙って来ていました。ご主人様と一緒に眠るのはとても安心出来るので、その時だけは不安な事も何も感じなくなるので……。本当にありがとうございます、ご主人様。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ