第66話 仕事が一層捗ります
「い、いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます」
たどたどしいプラムの声が、お客様を出迎える。最初の事を考えると……この子が一番成長したかもしれないな。
「噂を聞いてもしやと思ってこちらに参りましたが……営業しておられるのですね」
「ク、クラリスさん……こんにちわ」
「ご機嫌よう、プラムさん」
「お待ち頂ければ順次……」
「緊張しなくても大丈夫ですわ、椅子をお借りしますね」
「……はい!」
テキパキと仕事をしてくれるカミラとプラムのお陰で、何とかお店はやれている。少し……物足りないけどね。
「お、お待たせしましたクラリスさん……」
「あら、では失礼しますわ」
「どうぞ!」
扉から入ってくるのは店のヘビーユーザー。クラリスさん。最初こそ困った人だったけれど……今では本当に仲のいい、頼りになる存在だ。
「お加減、如何ですか?」
「何とか……まだ安心は出来ませんが」
「そうですか、何か精の付く物を贈りましょう」
「きっと喜びます、あの子……食べるの好きですから」
「ふふ、それは何よりですわ。それより、あそこからどうやって……」
「ここでは言い辛いので、またいずれ」
「そうですわね、では今日はこれで失礼しますわ」
「離しませんよ?」
「!!?」
そんないつもの光景。これを安心しておくれているのは……全て特異魔法のお陰だ。
僕の特異魔法【腹痛】とは仮の姿で、本来の姿を【毒帝】。
毒を生み出し与えるに留まらず、その全てを超越し、コントロールする支配能力。破壊する事も出来れば、逆の作用を及ぼす事も、消す事も、エネルギーとして活用する事すら可能ときた。
いつか鬼豹のおばあちゃんの言っていた理不尽の象徴とは正に的を射たものだと、今なら確信を持ってそう言える。
この能力は……異常だ。悪用すれば恐らく止めどなく凄まじい悪を為す事も出来れば、軍に戻れば破竹の快進撃を見せる事も容易だろう。最早この能力に……敵などいないと言っても過言では無い。
だけど僕はーー。
「い、いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます」
レミリアの望む幸せな光景を、ここて生み出し続けようと思う。きっと、それが僕の望みでもあるから。
僕が【腹痛】に便意を要求していた時、皆がスムーズに事に及ぶ事を特に不思議に思った事もなかったのだが、【毒帝】に目覚めてからは違う。
どうやらこいつは、さり気なく排便サポートもしてくれていたようだ。それが不可能な利用者様も健康な排便が可能になる為の不備を整え、便意へと導いてくれていた。なんて奴だよ、こっそり凄い事してくれちゃって。
やっぱり僕の思った通り、こいつは破壊の化身なんかじゃなかった。もっと、優しい奴なんだ。きっとその【毒帝】という言葉の意味だけでは、こんな事に使っているのは異常だろうとは思う。
けれど僕は、その特性を活かして更にハイクオリティなこの街の【便通師】としてやって行こうと思っている。
排便にかこつけて、さり気なく健康サポートまでしてしまおう。みんなの身体の健康を、もっと促進しよう。そして誰かがまた一人また一人と笑顔になれる様に。
それが僕の……仕事だからね。
「失礼……あら? 受付に居なかったらもしやこっちに? と思ったけど……レミリアちゃんはまだいないのね。なら握手だけ済ませて帰ろうかしら。はい」
「……相変わらずのベテラン具合ですね」
【あとがき】
第1章の終わりまで本作をお読み頂きありがとうございます。
私にとって初めてのランクイン作品でお見苦しい点も多々あったと思いますが、一章完結までお付き合い頂き本っっっ当にありがとうございます。
本作、【便通師】は皆様に支えて頂いたお陰で総合ランキング、カテゴリーランキング共に【最高2位】という快挙を成す事が出来ました。
そして、このタイトルを回収する話まで、本当に楽しく書かせて頂きました。重ねて、ありがとうございます。
今後の話を少しだけこちらで連絡させて頂きます。この連絡はここまでお読み頂いた皆様にのみ出来ればそれで良いので、日報にも致しません。ややネタバレも含みます、姉の話ですね。
まず【便通師】の今後ですが、変わらずにダラダラと日常系ほのぼのストーリーとして、朝と昼に毎日更新しようと考えておりますが、更新ペースは少し落とさせて頂こうと思います。
そして不遇のレミリアのお姉ちゃんですが、これはまだかなり先の話になるのですが、巡り巡って無事に素敵な主人に出会えますので、そこはご安心頂ければと思います。レミリアの姉、オリヴィアの主人は同い年くらいの女性となります、よろしくお願いします。
そして明日以降、土日の更新ですが、土曜に一度、そして日曜はお休みさせて頂こうと考えております。
見辛いと思い、章立てもしていなかったのですが、それを設置し、第二章が明日から始まります。
その第1話のタイトルは、
【いらっしゃいませ⑤】
です、お楽しみにお待ち頂ければ幸いです。
では最後になりますが、もしよろしければ、もしよろしければ! 最新ページの下にスクロールした先に【評価】のボタンがございますので、そこまでお読みいただけたその時は、ポチポチっとして頂ければ今後の励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。
評価ポイントのボタン、一番新しいページの下にしかないんですよね。煩わしいお願いで申し訳ありません。
改めまして、本当にありがとうございます。
二章からもどうぞよろしくお願いします。
【生くっぱ】