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第61話 暗中模索

 はっきり言って、何も考えていなかった。レミリアのお姉さんの金額から考えて、レミリアの値段は破格だった。僕は所持金の範囲に収まった事でそこしか注視していなかったが……商人の言う通り。


 肩を持つつもりはないが、お姉さんの十分の一程度での取り引きなら妥当とさえ言える。馬鹿だったのは僕の方だ。


 自身の能力の有用性に気が付き、店を持ち、それが軌道に乗って働き詰めて浮かれていた。その挙句に行った失態がアレだと言うのなら笑えない冗談だ。


 買った事を後悔している訳じゃない。あった時間を食い潰してレミリアのタイムリミットを悪戯に奪った自分の無能さに腹が立つ。


 さっきの商人の言っていた薬だけを今から仕入れるメリットデメリット。仮に僕がお金を先払いして薬を探してくれと頼んだなら、奴は金を受け取ってこれ幸いと時間稼ぎをするだろう。レミリアが死ぬのを待てばいい。そして経費として既に使ったとか、前金で薬を買っているとか都合の良い様に言われてお金だけ取られてお仕舞いだ。


 それにあの商人の事だ、その売買ルートなんて聞いた所できっと答えやしないだろう。それが彼の……商売なんだから。


 どうする? このままじゃレミリアが……。治療院の先生の話だと、もう余り時間は残されていない。相談出来るとしたら……この人くらいか。


「ようこそ冒険者ギルドへ! 今日のご用件……あら? 院長さんじゃないの? こんな時間にギルドに何の用かしら?」

「マーベルさん……仕事中にゴメン。あの……僕……その……」

「……ちょっと待ってて、他の人に代わって貰うから!」


 マーベルさんはそのまま受付裏の扉から中に入り、中からは別の人が姿を現した。


「院長さん! こっち!」


 手招きするマーベルさんは僕をギルドの商談用の別室へと招いてくれた。何から話せばいいのか……。


「あの、実はかなり深刻な状況でして」

「何かあったのね、どうしたの?」

「落ち着いて聞いてください、獣人の種族的な病をご存知ですか?」

「獣人の? ……分からないわ。そもそも獣人のギルド員はいないから……私には門外の話ね。獣人の事なら奴隷商人の方が詳しいんじゃないかしら」

「ですよね……」

「……どう言う事?」

「れ、レミリアが……」


 僕は事の成り行きをマーベルさんに説明した。


「そんな酷い話!!」


 机を叩いて感情を露わにするマーベルさん。正直、そのリアクションだけでも今はかなり救われる。


「……あり得るのね。院長さんの表情とここに来たって事は……そう言う事よね?」

「僕の浅はかさの招いた結果です」

「……獣人にはコネは持ってないわ、森族は元々閉鎖的な一族だから……森から離れるリスクがあってもおかしくないわね。森が産んだ一族だもの」

「森族……、そういえばライバックさんは……」

「あっ!? そうね! 彼なら分かるかも!」


 ライバックさん、僕のかつての上司でありその素性を隠しながら軍に在籍する珍しいエルフ。そうだ、彼もエルフなら森族、もしかすると何か分かるかもしれない。


「私からも連絡を入れておくわね、あとレミリアちゃんのいる治療院を教えて」

「分かりました、よろしくお願いします」


 僕は僕で彼にコンタクトを取ってみよう。普段はグランバインにいる事が多いから難しいかもしれないけど、時間が許すならそこまで行ったって良い。急げば五日で往復できる筈。


 何せ他に方法が……浮かばない。

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