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第59話 不調の正体

「では……別室に移動しましょうか」

「え? あ、はい」


 先生がレミリアの元へと訪れ、様子を確認する。そして治療を施す事なくこの台詞。いや、そうじゃなくて。早く治療を……。


「こちらへ」


 とは言えず、促されるがままに別室へ。カミラやプラムはレミリアを見て貰っている、ここには僕一人。それにどうも先生の様子もおかしい。心臓の音が……やけに煩い。


「さて、それでは簡潔に言いますよ?」

「お、お願いします」

「彼女の症状は種族的なものです」

「種族……?」


 どういう……? 先生は話を続ける。


「あまり知られてはおりませんし、本来はこんな事にはなりませんから」

「あの、それはどういう……」

「彼女の種族、狼の獣人は本来森で生活してますよね?」

「はい」

「それが何らかの理由でここにいる、それが問題なのです」

「えっと……」

「彼らの縄張りとする場所には必ずある果実が存在し、それを定期的に食べながら大人になる事で身体が成熟すると、その後は何の問題もなくなります。慢性的な毒を日々解毒している様なものですね」

「え……?」

「しかし、何らかの理由で子供のうちに森から連れ出されると、特殊な薬が無ければ生命の維持が出来なくなります。当たり前と言えば当たり前なのですが」

「なっ!?」


 生命の維持が……!? れ、レミリアの?

 ……嘘だろ?


「そしてその薬は希少で、私どもは扱っておりません。そもそも本来は必要ありませんからね。こんなケース殆どない上に、大多数が奴隷におこる現象ですから」

「え……ならその薬はどこで?」

「持っているとすれば、奴隷商でしょうね。ただし、彼らの間でも種族専用の成人薬は高値で取り引きされている上で希少ですから。手に入る保証はありません」

「そ、そんな……。ではここでは……?」

「治療費が払えるなら症状を抑える事は出来ますが、根本的な解決にはなりません。魚を陸で飼っているような物です、水をかけても一時凌ぎに過ぎませんから。私はそんな悪どい真似はしたくありません」

「どれくらい猶予があるのですか?」

「個体差がありますが、症状が出てから暫く猶予はあるはずです。最初は身体全体の麻痺感、特に手先の麻痺から始まり、身体の痺れが大きくなると咳が出始め、そこまで来るとかなり進行していると言えますね」

「……ではひとまず治療をお願いします」

「治りませんよ?」

「……お願いします」

「分かりました」


 種族的な……症状? そんな事、買った時には何も聞かされていなかった。それにどうあれ薬を持っているのは奴隷商人だ。


 ……あまり顔は出すなと言われているが、ここまで来れば関係ない。それに、来るなと言っていた理由が()()だったとしたら……許せない。


 まずは尋ねてみよう。

 話はそれからだ。

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