第53話 噂の二人組
「そしたら話してた通り、今日はダギルさんの所でお食事会だからさ。準備が出来たら向かおうか」
「……ご飯、期待」
「前にマーベルさんに聞いていた人ですよね! うわーどんな人なのかなー」
「鬼豹とかって人らしいよ」
「え、ちょっと怖いなぁ……」
「……プラム、大丈夫」
「どうして?」
「……襲われるなら、先にレミリア」
「えぇ……そうなんですかね?」
「いやいや襲わないから」
不思議な妄想をしている三人を連れて、一路ご飯処ダギル亭へ。比較的早い目に終わったから多分待たせたりはしていない……お。
あれはマーベルさんかな?
「おーい、みんなお疲れー!」
「お疲れ様です! マーベルさん!」
「あぁ……抱きしめたい衝動が……いや、きょ、今日はこの後アレだからね。が、我慢……」
「まだ来ておられないのですか?」
「そうね、でもそろそろの筈よ?」
そういうとマーベルさんはおもむろにレミリアを撫で始めたが、まぁあれくらいなら……ね。レミリアも嫌がってる節はないみたいだし。
「あ、あの二人ね」
そう言って視線を向ける先には、僕と同じくらい、身長170はあろうかという女性と、隣に身長130……? カミラより少し小さいくらいのおばあちゃんが二人で歩いてきた。
二人とも……只者ではない雰囲気を醸し出している。僕も紛いなりに戦いには精通している。だからこそ分かる、おばあちゃんの方が相当にヤバイ。
「おやおや、待たせちまったかい」
「だからあっしがアレ程早く行こうぜって言ってんのによ」
「いえいえ、今着いた所ですよ」
「あらそうかい、それならいいんだけどね」
「言ってくれてるだけだっつーの」
おばあちゃんに落ち着きがあるのは当然として、異常なのは魔力。練磨された流麗な動きをしている、アレは尋常じゃない。女性の方は……まだまだ荒削りみたいだね。僕と同じか……くらいかな。
「あたしは鬼豹のジル、こっちが孫のペロさね。よろしく頼むよ」
「ペロだ、よろしくな」
「僕はナビリス、しがない医院を営んでおりまして。従業員のレミリア、カミラ、プラムです」
それぞれが頭を下げ、そして軽く自己紹介をする。まぁ最初だからね。それに……この人かなり凄い人みたいだし。
「なんだい、坊やの所は託児所も兼ねてるのかい」
「まさか。店はまだまだですが、彼女たちは全員が精鋭ですよ? 店に来れば分かります」
「ほぅ、良い返しだ。下らない言葉で従業員を軽んじたなら帰ってた所さね」
えぇ……試されてたんですか?
「これなら……良い様子見になりそうだ。まずは食事にしようかね」
「そうしましょ! ジルさんもペロちゃんも、ほらお店に入りましょう!」
マーベルさんに背中を押されて入店する。
これはまた……クセの強そうな人たちだなぁ。