第52話 夜のアポイント
「いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます！」
「キャァァァァ今日のレミリアちゃん何か耳が可愛いぃぃぃぃ」
「ちょっと！？ マーベルさん！？ はぅぅ」
「あぁー……この瞬間、この時間を夢見て私は今日を生き抜いてきた……最高」
「マーベルさん、はぅ、い、息が……」
「私の家にくれば酸素吸い放題よ！」
「あ、あの……」
「それはダメですー」
「ダメみたいでふ」
「あ、レミリアちゃんが……噛んだ。もうダメ、歩けないわ……」
「マーベルさん！？」
謎のセールストークでレミリアをお持ち帰りしようとしていたのが聞こえたのでひとまず拒否しておいた。酸素吸い放題ってそれ物は言いよう過ぎやしませんかね。めちゃくちゃだ。
そしてその後その場に座り込み、レミリアに助けを求めるポーズを取る前にカミラとプラムによって迅速に椅子へと運ばれたマーベルさん。あぁ……そ、そんなーとか言っていたがナイスカミラプラムとしか思わなかった。
それにしてもあの人ずっとレミリアのファンだよなぁ。有り難い事なんだけど熱狂的だよね。まったくもう。
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「お疲れ様！ いやー今日もレミリアちゃんは最高だったわ！ 持ち帰り許可がおりたらすぐ教えてね！」
「お疲れ様です、そしておりませんから」
「もーケチ臭い事言わないでよ！ 貴方と私の仲じゃない」
「腐れ縁……腐り縁？ ですね」
「……まぁそうよね」
異常に高かったテンションを正常に戻すと何かを思い出すような仕草をするマーベルさん。何かあったのかな？ それなら先にそれを言えば良いのに……。
「最近ね、鬼豹がいよいよ動き出して、貴方に会いたいっていってるのよ」
「え、確かその方はご老齢の……」
「そうね、でも客としてじゃないの。ゴメンなさい」
「なら……何を？」
「娘さんに、特異魔法とは如何なる存在かを体験させたいとか何とか」
「あー成る程。まぁ……一応特異魔法ですもんね」
「一応ね」
「大丈夫ですよ？ 今日ですか？」
「今日なのよ、ごめんなさいね」
「問題ないですよ、あと場所はどこにしましょう？」
「そうね……どこかないかしら。夜の方が良いわよね？」
「ですね、それなら良い料理屋があるのですが、そこでどうですか？」
「あらそれ良いわね、そうしましょ！」
嬉しそうに同意を示し、僕の手をとって握手の形を自ら作るマーベルさん。
「じゃ、また……夜にね！」
「はい」
そして自然とトイレを経由して帰るマーベルさん。
いつもながら本当、診察ベテランの風格ですね。
