第51話 お礼の方法
「いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます!」
「ご機嫌よう、レミリアさん」
「あ! クラリスさん! この間はお肉ありがとうございます!」
「喜んで頂けた様で何よりですわ」
「最近見ませんでしたね、忙しかったんですか?」
「少し、コーラルカーンへ出向いておりまして」
「えっと……北の街でしたっけ?」
「えぇ、私こう見えてもやる事は多いのですよ?」
「大変ですね……あ! これ!」
「……? 何ですの?」
「新作のタオルです!」
「……良いですわね、フワフワ感が増しましたわ」
「まだ始まってないんですけど、クラリスさんにはお渡ししておきますね!」
「あら、それは有り難い。それでは待たせて貰いますわね」
「はい、またお声がけさせて頂きます!」
今日は久しぶりにクラリスさんが来てくれたみたいだね。あの日とんでもない肉を受け取ってから音沙汰なしでお礼もまともに言えてないからね。
結局全部は使い切れなくて、お店に寄付してきたくらいの大きな肉塊、しかもめちゃくちゃ美味しい肉塊。あんな良い経験させて貰ったんだからちゃんと言っておかなきゃね。あの日は本当に楽しかったからさ。
……そうだな。
少しお礼もしておこうかな。
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「失礼しますわ」
「クラリスさん、ご無沙汰してます」
「ふふ、数日ぶりですわね」
「その節は本当にありがとうございます。みんなとても楽しんで……それにめちゃくちゃ美味しくて。ずっと興奮しっぱなしだったんですよ?」
「それは何よりですわ、アレと同じものをあと二つ同時に頂いてしまって、本当に困っていたので気にしないで下さいまし」
「あ、アレがあと二つ?」
あんな馬鹿デカイ肉塊を同時に三つも貰う生活って何なんだろ……。いや、うちも一つ貰ってるから人の事は言えないか。
「それでは失礼します」
「どうぞ」
「そう言えばコーラルカーンに行っていたとか?」
「そうですわ、寧ろ私もニーナも元々はあちらで暮らしておりましたので」
「コーラルカーンは軍事系の街なので少し心配ですね」
「わ、私はそれ程危険な立ち位置ではありませんわ」
「なら安心です。暫くこちらに?」
「え、えぇ……そうですわね。そろそろ……」
「それは良かった。そういえば、実はあの日の肉は料理屋さんで一緒に食べたのですがね」
「はぃ……」
「店主ひとりでは無理だとみんなで手伝いまして、その場にいた大勢で楽しませて頂きました」
「そ、そうなのですね……あの……」
「本当にありがとうございます、もう嬉しくて嬉しくて」
「ま、また機会があれば何か……、あの……」
「あ、そうですね。そろそろ」
「はひ……」
「こちらへどうぞ」
クラリスさんの手を引きながらスイートルームを目指す、その途中。ここでも少し……ね。
「も、もう私……」
「そうですねぇ、あ。ちょっと、忘れ物をしました」
「!!?」
「戻ってもいいですか?」
「いや、あ、あの……」
「戻りましょうか」
「ちょ……」
「冗談です、着きましたね。どうぞ」
「し、失礼しますわ!!」
バァァンと扉を開けて勢いよく飛び込む日常風景。
安定のスリッパ不使用。
うーん、ちゃんとお礼になってたかな?
なってたらいいなぁ。