第5話 奴隷屋さんを訪問。
「いらっしゃいませ、お探しの商品はどの様な?」
訪れたのは奴隷商店、その入り口の手前で既に店主が手揉みをしながらニタニタ顔で飛び出してくる。うーん、これは店選び間違ったかな……。
「ちょっと労働力を。出来れば看板娘みたいになってくれたら……」
「なな、何と! これは神の導きなのか! 今まさにそれをご所望のお客様にはこの商品が是非におススメでございます!」
「あ……はい」
食い気味に喋られるとどうも調子が狂う。促されるままに店内へ引き込まれ、そして商品説明が始まる。
「こいつはオリヴィアって名前の狼の獣人でさぁ。この手の奴はなかなかお目にかかれない珍しいタイプですぜ旦那! いやー旦那は運がいい!」
「……はぁ」
「しかもまだ初物! 病気のリスクもねぇし健康状態も悪くない! これは本当にお買い得な商品ですぜ旦那! こんな日に旦那みたいな人がうちの店に来てくれたのは正に天の計らい!」
「えっと……それで値段は……」
ニヤリと表情を歪める、そんな店主に僕は圧倒されっ放し。何なんだろう、説明されている奴隷の事が全然入ってこない。
「こいつは見ての通り使い道が多い、だからちょっと値は張るのですが……まぁこれくらいでさぁ」
「……無理ですね」
「チッ」
高過ぎる。先日店を調達した所の僕にはとても手が出ない金額。あと舌打ちが聞こえた様な気が……。
「もう少し安い奴隷の方は……」
「あーあーこの野郎、ちっとも売れやしねぇ。大金はたいて入荷したってのによ」
「あの……もう少し安い奴隷の方……」
「安い奴隷? そうだな……もういいか」
「え?」
「いや、こっちの話だ、奥についてきてくれ」
「……はい」
急に口調が荒くなる店主、正直怖い。やっぱり店選びを間違えたかなぁ。
「さっきのあいつには聞かれるなよ?」
「……さっきの?」
「店頭にいた狼のやつだよ。今から紹介するのはその妹だ」
「……はぁ」
よく分からないまま話を続ける店主。別に言われなくても勝手に話たりしないんだけどね。
「ほら、何か喋れや」
「……あ、あの……レミリアです」
紹介されたのはさっきの獣人さんに似た雰囲気の一回り……、いやふた回り小さな女の子。
「うちも商売でやってるんだが、さっきのアレに大枚叩いちまって今ちょっと金に困っててね。こいつでいいならこの金額で売ってやるよ」
そう言いながら提示されたのは購入限界をギリギリ超えた金額だった。生活費が……。他の奴隷さんも見たかったのけれど、押されるがままに押し付けられそうになっている。こういう所、直したいけどなかなか直らないんだよなぁ。
「あ、あの……私が売れたら、お姉ちゃんはもう少し大丈夫ですか?」
「あーまぁお前が売れたらな。売れなかったらもう仕方ねーさな」
目の前でされるやり取りから何となく状況を察する。多分……そういう事なのかな。もう少し大人な奴隷さんに来てもらった方が良かったんだけど、流石にこれを聞いちゃうと……弱いなぁ。
「あの、お願いします。私何でもします。頑張ってお仕事でも何でもしますので、お願いします、お願いします、お願いします……」
ペコリと、小さな身体を何度も半分におる少女。
さっきまでの内容から察せる事情。
あーあ、ダメだ。もう買うしかないじゃん。