第46話 荒ぶるプラム
「切る時は手はこんな感じだと切りやすくて……」
「ふむふむ……」
「これは先に油と炒めておくと香りと甘みが……」
「な、成る程」
仕事を終えて今日も四人で帰宅。今の家はどう考えても手狭なのだが、もともと檻が出身が一人、あと二人は屋根なし出身なのでどうも苦ではないらしい。僕のパーソナルスペースは完全に死んだけどね。
「……洗濯、完了」
「いつも、ありがとねカミラ」
「……ご飯と宿、代え難い」
「よーし、ならご褒美だ、ありがとね!」
「……あぅぅ、髪の毛、ぐちゃぐちゃ」
特に報酬だなんだというのは求めて来ないのでお礼を言ったり、頭を撫でてみたり、一緒に美味しいものを食べたり、たまには服を買ってみたり、そんな日常。
「出来ましたー!」
「……味見、し損ねた」
「もう食べれるから味見は無しです!」
「あぅ、……残念」
「あ、あの……」
「どうしたんだプラム?」
「こ、これ……」
プラムが差し出しているのは全員で共有する大きな皿に盛られた沢山の焼きそば。……もしかして?
「プラムが作ったのか?」
「か、簡単だから……」
「……難易度より、味」
「へー凄いな。もうここまで出来る様になったのか、それに美味そうだな。さて、そろそろご飯にするか!」
「……賛成、腹ペコ」
なんだかこういうの、軍にいた頃は感じられなかったからなー。温かみって言うのかな、それを最近は感じる様になってきた。間違いなくこの子たちのお陰だろう。
感謝の気持ち、忘れない様にしないとな。
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同日夜。今はベッドで三人が一緒に寝ていて、僕は一人でソファで眠っている。慣れてくれば場所なんて瑣末な事だ。最後に少しだけ運動をして、さぁ寝ようかというタイミングで寝室からカミラが一人で出てきた。眠れなかったのか?
「どうした?」
「……荒ぶる、プラム」
「あぁ、またか」
初めて聞いた時は本当なのかと疑ったが、その後こっそり見張った事があるのだが。プラムはそこそこ寝相が悪い。そして相性がいいのか、レミリアは寝ると起きない。つまり、カミラだけは少し困っている、という訳だ。
「……顔、蹴られた」
「それは……お、赤くなってるな」
「あぅ、……い、痛い」
「おっと、悪い悪い。まぁこれくらいならすぐに良くなるよ」
「……寝られない」
「え?」
「……今は、無理」
カミラがそういうので寝室を除いてみると、むにゃむにゃ言いながら確かにプラムが暴れていた。これは……無理だな。
「仕方ない、ソファで寝ようか」
「……待って」
「ん?」
カミラに場所を譲って自分は床で……と思っていたら、服の裾を掴んで阻止されてしまった。……何なんだろ?
「……それは、ダメ」
「でも寝れないんだろ?」
「……なら、こうする」
「え? ……おい」
ソファで眠る僕、そして僕の上で眠るカミラ。
「……これで、完璧」
「どこがだよ……」
これだと余計に眠れないじゃないかと文句を言おうとしたら……カミラの寝息が。
おいおい、嘘だろ? ね、眠れない……。