第44話 懐かしい顔
「ご主人様! お知り合いの方が来店されてます!」
「え? 僕の知り合い? 珍しいな」
自分で言うのも何だけど僕は友人が少ない。それに信用している人も。だから知り合いが来店したと聞いた時は新手の詐欺か何かかと勘ぐったが。
「よっ! 遅くなってすまねーな!」
「ら、ライバックさん!?」
そこにいたのはかつての上司だった。
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「すみません、お待たせしました」
「いやいや、急に来た俺っちも悪かったからよ。それにしても立派にやってんなー、驚いたぜ」
「えぇ、何とかやれてますね」
もう既に閉店の時間が迫っていたのでライバックさんには少し待ってもらい、夜に話そうという事になっていた。
「ナビリスよー、お前めちゃくちゃ真面目だったのに何でまた急に軍を辞めちまったんだ?」
「えっと、まぁここを始めたキッカケでもあるんですけどね。実は特異魔法に目覚めまして」
「嘘だろ!!?」
「えっと……本当です」
「マジか……そりゃすげぇ。むしろ何でそれで辞めちまったんだ? 漸く始まるってのによ?」
「それがですね……目覚めた能力に問題がありまして……」
「能力に問題? 特異魔法なのにか?」
「えぇ、そうなんですよ……」
そして僕は、軍を辞めた経緯と、ここを始めるに至った経緯を説明した。
「くくくあははははマジかよそれあり得ねー! 聞いた事ねーよ特異魔法【腹痛(微弱)】って何だよ馬鹿かよあはははは」
「僕もかなり困惑しました……」
「それでここをやっるってんならやっぱお前は面白いやつだわナビリスよ! 俺っちがそんな能力に目覚めてたら多分不貞腐れて普通の生活に戻ってこれねー自信があるわ」
「いや、半分自暴自棄でもありましたよ? かなり理性が吹っ飛んでましたからね。勢いでこの店と高い奴隷を買っちゃいましたし」
「へぇ……成る程ねぇ。でも上手くいってんだろ?」
「お陰さまで」
「いやー大したもんだ、それに面白すぎるぜナビリスよーあははは」
「笑い過ぎですよ……」
「折角だ、俺っちにも試してみてくれよ!」
「えっ、でもライバックさんは……」
「さて、通用するかね?」
そう言って悪戯な顔で僕を見つめるとても整ったイケメンのライバックさん。実は……彼はエルフなんだ。髪は綺麗な緑の癖毛で、その上で伸ばしているから耳は隠れて長さが分からない。
森族のエルフは人族とあまり上手くいってないからみんなには内緒にしてるけど、本当はエルフのライバックさん。なんでも……行方不明の同胞を探す為に軍を利用してるんだとか。何も言ってこない所をみると……まだ見つかってなのだろう。
「ほら、手。握れよ?」
「よし、いきますよ?」
彼は桁違いに魔力が強い。そして、色々な事に耐性をもっている。そんな彼に僕の腹痛なんかが……。
「おっ、なっ、ちょっ、これは……」
「ど、どうですか?」
「うわマジか! こういうのガチで食らったの久々だぜ、やるなナビリス! トイレどっちだ?」
「あっち」
「すまねぇ!」
通用した。あれぇ? 確かライバックさんは凡ゆる状態異常に対する耐性を産まれながらに持ってるって前に教えて貰った事があるんだけどな……。
不思議だ。