第43話 いらっしゃいませ④
久しぶりのラベルカーン。本当にいつぶりだ? 今回は遠征がかなり長引いちまったから仕方ねーんだけど、俺っちにもやらなきゃなんねー事があるからちょっと大変だったかな。もっと早く来たかったのによ。それでもま、これもまた一興ってやつさ。
そんな多忙な中で俺っちがわざわざラベルカーンに来たのには勿論訳がある。懐かしい、昔の後輩が開業したとかなんとかって話だ。こりゃ顔出すしかねー! って考えてから既に数ヶ月。流石そろそろ顔出してやらねーとな!
しかしラベルカーンってのは相変わらず賑やかな街だな本当。ここは【奴隷商人の街】としてのし上がった街だから労働力に溢れている、即ちそれは活気。俺っちとしては内心面白くないが、そこに文句を言っても始まらない。
それに一応信用している商人もいる。奴にだけは今回も声がけしていくか。それで少しでも探し人の情報が手に入るなら、奴隷商人でも利用するさ。おっと、それは私情だ。今回はそっちじゃねぇ。
えーっと、確かこの辺りの道の裏手に……どこだ? あれ? うーん、もう少し詳しく聞くべきだったか……。
「あら、ライバックさん? 珍しいわね」
「おっ! マーベルじゃねーか良い所に!」
「良い所?」
「実は後輩の店を探しててな、この辺りに何ヶ月か前に開業してる筈なんだが……」
「何の店なのかしら?」
「さぁ? ナビリスってんだ」
「あぁ、医院長さんの所だったら私も今から向かう所よ、一緒にどう?」
「ひゅー流石マーベル嬢! 超助かるぜ!」
「相変わらず軽い人ね。まだA級なの?」
「そりゃもう、俺っちは永遠のA級だかんな!」
「はぁー勿体ない。絶対そんな筈ないのに」
「そういう契約なんだ、仕方ねーっしょ? 俺っちは軍を利用してるだけ、軍は俺っちを利用してるだけ。それだけさ」
「……まだ、見つからないの?」
「そう……だな、まぁ気長に探すっきゃねーよ!」
「そうね、何か分かったら連絡するわ」
別に軍に拘りがある訳でも、人族を守りたい訳でも、魔族を排斥したい訳でもない。俺っちはただ探し人を見つけたい、それだけなんだ。
「ほら、あそこよ?」
「ほー、こりゃ立派なもんだな」
そこには思っていたよりずっとしっかりした建物が存在した。看板には【ようこそナビリス医院へ】と書かれている。医院? あいつ医者だったか?
「いらっしゃいませ! あっ、マーベルさん!」
「キャー今日も堪らないわレミリアちゃん! あー最高、この瞬間のために私は今日を生きてきた……」
「そ、そんな大袈裟な……あっ! いらっしゃいませ」
「こりゃどうも。俺っちはここの医院長の知り合いだかっさ、取り次いで貰えねーかな?」
「ご主人様の知り合いの方でしたか、少々お待ち下さい!」
綺麗な店舗に可愛い看板娘。野郎、なかなかやるじゃねーか。にしても気のせいか? いや、まぁ俺っちはそっちの専門じゃねーし。気のせいかもな。
元気にしてっかな、ナビリスのやつ。
あー早く会えねーかな。