第40話 差し入れ
「ま、まだですわ……」
「えぇ……クラリスさん? あの……」
「まだ……まだですの」
「……」
「そ、そろそろ……」
「離しませんよ?」
「!!?」
最近この人の事が何となく分かって気がする。成る程どうして、この人はある意味これを楽しみに来ていた訳だ。何だかんだで嬉しそうだもんね、理解はし難いけど。
「え……ちょっと」
「離しませんよ?」
「!!?」
「さて、このまま手を繋いで少しお散歩に行きましょうか」
「なっ!!?」
「冗談です。ほらスイートルームに案内しますよ」
「あ、はひ……」
そして恐る恐る歩くクラリスさんをスイートルームに誘導すると、とんでもないスピードで扉を開けて飛び込んでいく。あの人絶対スリッパ使ってないよアレ。
「ふぅ……今日もお世話になりましたわ」
「お疲れ様です!」
「そうそう、先日知人から食べきれない量のお肉を頂きまして」
「……お肉ですか?」
「差し支えなければ今日の営業終わりにでもこちらにお持ちしようと考えているのですが……」
「良いんですか!?」
「勿論ですわ、皆様で食べて下さいまし」
「ありがとうございます、クラリスさん! 明日は休みなのでゆっくり食べれると思います!」
「それは良かった。最近は人が増えたせいか、更に過ごしやすい空間になってまいりましたね。私も嬉しく思います」
「そう言ってもらえると私もとっても嬉しいです!」
「ふふ、ではまた夜に」
「お待ちしてます、お疲れ様でした!」
んん、差し入れ? お肉か、それは有り難い。お肉はみんな大好きだからなー。きっとレミリアが一番喜んでるな、あの子なんだかんだでお肉料理大好きだからね。
でもクラリスさんからか。どんな肉なんだろ?
______
「お疲れ様、営業は終わりまして?」
「あ、クラリスさん!」
「……営業、終わり」
「そう、なら良かったですわ。サリファ、アレをこちらへ」
いつもは入り口に待機しているサリファさんが、どうやらお肉を運ぶ係をしていた様だ。一体どんな肉が……!!?
は? 肉?
……いや、あれは……肉塊?
「少しですが、お裾分けですわ」
「こ、こんなにお肉が……! こ、これ……」
「プレゼントですわ」
「良いんですか!?」
いや、これは僕も良いのかと問いたくなるね。多分……20キロくらいあるんじゃないの?
差し入れとかいうレベルじゃありませんからコレ。
どうしよう。
我が家のキッチンでこれはちょっと……無理かな。