第4話 新たな職種を開拓【便通師】
その後何人かで試してみたが間違いない。このスキルは便秘に通じている。考えもしなかったが、もしかすると誰かの為になる仕事としてこれを機能させる事が出来れば……人の役に立てるのでは?
そう考えてからの行動は早かった。まずは場所の用意、ハコがなければ何も始まらない。御誂え向きの店舗を探してそこを一人で掃除して改装。
そして特に何も考えずに始めてみたが、よく考えてみたらどう客を集めればいいのかサッパリ分からなかった。なので、まずは豊富にあった資金に任せて儲けを諦め、無料体験を実施する事から始めてみた。
【何も難しい事はしなくても、お腹の悩みを抱えたアナタのストレスを解消致します】と。無料というのが良かったのか、通りかかりでついでに頼んでいってくれる人がチラホラいたのだが、その全員が慌ててトイレを探して旅立っていった。そしてそれをしながら僕はこう思った、噂が広がる前にトイレは沢山用意しておかなければ、と。便通を良くしてトイレで順番待ちはシャレにならないからね。
そしてそれから予想通り、小さく始まった【便通師医院】の噂は瞬く間に広がっていった。一部のニーズに。実際診察とは言ってもする事など殆どなく、手を握れればそれで診察は終わり。なのでトイレを複数設置しなおしてから仕事を始め、その後は自分でそのまま会計をして、トイレへと誘導していった。意外と何とかなるもんだ。
そんな日々を一ヶ月も続けていると、本当にお客様が多くなってきた。お腹の悩みを抱えた人たちはこんなにも多かったのかと驚きを隠せない反面、意味のある仕事に能力を活用出来ている事に安堵する。しかしこれ以上人が増えると色々と間に合わない事は既に危惧され始めていた。
具体的には体力の限界。いくら軍で鍛えていたからって、連日これを一人でやっていては身がもたない。地味にではあっても魔力が消費されているのがかなりきつかった。幸い元手はそれなりにあった上で、収入もそこそこ得ている。何より原価がかかっていない。
……よし、人を雇うか。
一人で場を回す状況の限界、ならば単純に人が増えれば問題は解決。だが軍とお客様以外に知り合いのいない僕は誰に頼れば良いかが分からなかった。
なので、逆にこれでいこうというのがすんなり決まってしまった。奴隷を購入しようと思う。
この街には奴隷商なる仕事も存在し、彼らに売買される人材は契約次第では最大の戦力として数える事が出来るだろう。ついでにエッチな事が出来れば言う事は何もない。
次の定休日、僕は奴隷商人の店を訪ねる事を決意した。