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第37話 大切な確認

 仕事の終わり、間もなく全てが片付きこれで帰れるぞという場面でカミラが突然晩御飯に麺類を要求。これを想定していなかったプラムが買い物のリストに麺を入れることが出来ていなかったので、時間もある事だし二人で買い物へ行く流れとなった。


 勿論サリファさんの護衛付き。無感情な人なのかと思っていたら、むしろ最近は彼女の方から積極的にみんなに話しかけてくれているみたいだ。

 分からないものだよね。


「ご主人様、後は何かしておく事ありますか?」

「いや、多分大丈夫かな。お疲れ様、レミリア」

「ご主人様もお疲れ様です!」


 健気に、そして献身的に仕事をこなしてくれるレミリア。あれから彼女は自身の家族の話を全くしていない。心配ない筈はないと思うけど、我慢させてるなら……何とかならないかなとは思うんだ。


 でも、どうも彼女が売れた事は姉には伏せられているらしい。顔を出す事は禁じられている。無理に伝えたってお姉さんの生きる希望を悪戯に傷付けるだけに終わる可能性すらあるんだ、何も……出来ない。


 それに両親に関しては更に何も分からない。もしかすると……レミリアの様に既に何かしらの形で動いている可能性もある。でも確かめる術がない。


 なので、言っても……仕方ない。それは分かっている。分かっているけど……。


「レミリア、大丈夫?」

「まだまだ大丈夫ですよ! もう一度営業しますか?」

「いや、もうお客様もみんな帰っちゃったしね。また明日頑張ろう」

「そうですね!」


 いつも元気いっぱいで、しっかり者のレミリア。でもしっかりし過ぎていて……心配にもなる。


「お姉さんの事、僕は忘れてないからね」

「!?」

「まだまだ全然足りてないけどさ、カミラとプラムのお陰で効率も上がって売り上げは増えているのに余裕も出来てきた。だからさ」

「……なんですか?」

「営業時間、少し伸ばそうかなって」

「……え?」

「それだけできっと売り上げがあと5%、もしかしたら10%くらい変わってくるかも。少しでも早く稼ぎたいからね。レミリアも何かあったら教え……うわっ!?」

「ご、ご主人様……」


 レミリアが急に……抱きついて……!


「私も……一日だって忘れた事なんてありません! あの日ご主人様が言ってくれた……二人の目標。今はそれだけが私の宝物なんです」

「……そっか」

「何もない私の大切な宝物なんです。私も……その為にならいくらでも頑張れます!」


 泣きながら、でも……ニッコリ笑って見せて。


「頑張って、もっと何かないか探します! そして見つかったらすぐに報告します!」

「うん、僕も……考え続けてる」

「だ、だから……あの……わ、私……私……」

「大丈夫、レミリアは罪悪感を覚えなくてもいいからね?」

「で、でも、わた……私だけ……」

「気に……なるよね、そりゃさ」

「だって……わ、私だけがこんな……」

「そう、君だけが、考えられる立場にいる」

「!?」

「楽な場所なんかじゃないでしょ? 現にほら……こんなに辛そうな顔しちゃって」

「はぅぅ……」


 新しく入った二人とも上手くやらなきゃで、売り上げももっと必要で。こんなに考えて毎日努力して。これが楽な筈がないんだ。絶対に。


「ね、だからさ。一緒に考えよう? もっと、もっと!」

「はい……私……がんばりましゅ……」

「僕も頑張るからさ! ひとまず、明日から1時間早く営業しようか!」

「はい!」


 このレミリアの涙に報いるために。

 きっといつか……必ずね。


 やれやれ、いつのまにか本当に入れ込んじゃってるなぁ。この件は僕に直接の関係はないはずなんだけど……ね。だけどだよ? そのお陰で今、こんなに毎日が活き活きとしている。それにカミラやプラムとも出会えた。


 だからきっと、レミリアにはお金が。僕にはそのお金じゃない他の全てが必要だったんだ。だから僕は……全力で働こう。


 二人の目標が……ちゃんと叶うその日まで。

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