第36話 新体制
「いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます!」
「あれ? 何か人が増えてない?」
「あっ! えっと……ニーナさん!」
「あったりー! 良く覚えてくれてたね。いい子いい子してあげる!」
「ひゃぅぅ、か、髪の毛が……」
「あははごめんごめん」
今日も今日とて元気に営業中。受付、総合案内から不備のフォロー、マルチに働く万能のレミリア。
「あれ? 君はここで何してるの?」
「……私、裏方。補充係」
「へぇ気が利くねー凄いや。なんでここが減ってるって分かったの?」
「……お客様の数、あと時間」
「え、見てないのに勘でやってるの? 本当に凄いね……」
補充から掃除、細かい皆んなの必要な物を必要なタイミングで提供してくれる裏方のカミラ。
「ただいま戻りました!」
「あれ? 君も従業員さんなの?」
「……あ、えっと……い、いらっしゃいませ」
「あはは、気にしなくて大丈夫だよ。僕はお客さんだけど適当で大丈夫だからさ」
「あ、ありがとうございます」
「君は何してたの?」
「え、えっと……レミリアさんの使うペンのインクがそろそろ切れるのでそれを買うついでに、晩御飯の材料を冷蔵庫に配達してました」
「えっ!? 本当だ! 私も気づいてなかったのに……」
「えぇ……君も変な子だね。何で分かったの?」
「え、その……一日の減り方は分かってるのであと何日持つのかは何となく……」
「うわぁ……君も大概凄いね」
在庫の管理から発注、買い出し、後は掃除も兼任してくれている棚卸しのプラム。この子は最近洗濯も覚えてくれたから、時間を見つけてはタオルを洗ったり、帰る時にスッと帰れるのはプラムの力。
みんなそれぞれにしか出来ない役割のある自慢の従業員達だ。彼女たちの働きの効果で売り上げは確実に増加している。
何せ回転が早い。
ひとりが出て次の一人が来るまでの間にカミラの掃除が確実に終わっているので、何も気にせずにレミリアがお客様を次々と診察室へと誘導する。
僕はお客様と軽く談笑して次へ、の繰り返し。
そしてそれらが終わった時に、閉店と同時にその他のやるべき事が終わっている。在庫の確認も発注も僕が気になくても問題ない。全てプラムの手によって完了されている、しかも僕がやるより正確ときたら代わる理由すらない。
「やっほー、元気してた?」
「お久しぶりですねニーナさん」
「まぁ僕は任務で少し離れたりとかも多いからね、しょっちゅう来るのは難しいんだよ」
「たまに顔を見せてくれれば十分ですよ」
「あれー? 口説いてるの?」
「ま、まさか」
「!!?」
あれ? 何か複数の方向から視線を感じ……気のせいかな。
「あはは冗談だよ、君も元気そうで何より。クラリスはまだ来てるの?」
「彼女は常連さんですよ。ヘビーユーザーですね」
「ふふ、彼女、ハマると極端なんだよねー」
「みたいですね、貴女の事も心配してましたよ?」
「いっけね! 顔出してなかった! ほら握手早く早く! ……うぅぅキタキタキタ!! お疲れありがと!」
「お、お大事に……」
バタバタとスイートルームへ向かうニーナさん。
常連さんの顔は、見る度に少し安心するなぁ。