第35話 十人十色
「さて、プラム。ちょっといい?」
「……はい」
次の日、店で二人がいそいそと準備している最中に僕はプラムを呼び出した。もしかして……だけどね。
「この紙にさ、店の中にあるもので数の分かるもの、書いて貰っていい?」
「……? えっと……」
スラスラと次々に数を書いていくプラム。いやいや、待って、えぇ……。
「……これ、くらいかな?」
「嘘でしょ……」
その紙に書き出されたのはティッシュやタオルを超えて、洗剤、消毒液、消臭剤、スリッパ、ペンやメモ、椅子、机……照明に至るまで、殆ど書き出されていた。ここまで把握していたの? この数日で?
「えっと……なんで数を覚えてたの?」
「あ、ご、ごめんなさい……」
「いや、怒ってないんだ。こっちこそごめん」
「……? 不安……だったから」
「不安?」
「無くなるの……怖くて」
……成る程。繊細で小心者、或いは只のビビリとも言えるそれは、裏を返せばリスク管理の高さに繋がっていたって訳か。まさかプラムにこんな特技があるとは。
「えっとね、ちょっと気付いた事があってさ」
「……? はい」
「プラムにしか頼めないない仕事が見つかったんだ」
「……!?」
「もっと他にも数の管理を任せたり出来るかな?」
「……大丈夫だと思う」
「えっと、それなら……」
店の中にある凡ゆる在庫、そしてその発注のシステムを余す事なく全てプラムに伝えた。それこそティッシュからスリッパのクリーニングまで殆ど全て。
「……これだけ?」
「まだ大丈夫なの?」
「……多分大丈夫だと思う」
「えーっと、それなら……」
本当に細かな全ての備品の位置、そこから家の食材の管理に至るまで、もうこれでもかってくらいに全てをプラムに伝えきった。それでも彼女は。
「……これだけ?」
分からないものだなぁ。今までレミリアと二人で毎日時間かけてチェックしていたのに、この子は手前の数個を数えるだけで後ろの大元は全て覚えているから全体をサラッとなぞるだけで数字の変化を察知してしまう。
とにかく処理が早い。毎日オート棚卸し。
「そうだね、ここまで全部管理してくれたら……これは大助かりだね」
「……これくらいなら全然大丈夫だと思う」
「本当に? 凄いなプラムは……」
「……他にもあったら言ってね?」
「ん、了解」
心なしか、プラムの声に自信が出てるような……。やはり他のメンバーに立ち位置があると、それがない状態は不安で仕方なかったんだね。だからせめて数だけでも、と。完璧に覚えちゃった訳だ。凄いなぁ。
「よーし、在庫の管理と発注。あと買い出しは基本的にプラムが担当するように!」
「……頑張る!」
「買い出しの時は用心棒さんのサリファに声をかけて同行してもらってね、危なくない様にさ」
「……はい!」
うーん、目がキラキラしてる。
こりゃプラムもこれから相当活躍しそうだな。
まさかのみんな優秀でだんだん僕が引け目を感じ始めてるよ。せめてトレーニングだけでも、また始めるかなぁ。




