第31話 得手、不得手
「いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます!」
今日もレミリアの元気な声が店の中を駆け巡る。この子が居てくれるお陰で随分と店の様子も変わったよなぁ。特に利用者さんの笑顔が段違いに増えている、彼女特有の才能だよねコレ。
「カミラちゃーん!」
「……そっち」
「あ! 流石です、助かりました!」
「……気にしないで、私の仕事」
テキパキと接客をこなすレミリア、在庫の補充から確認、掃除までを素早くこなすカミラ。この二人の動きが完全にマッチしてしまっている。レミリアが動きづらくなっていた原因を、レミリア以上のクオリティで対処してくれる存在が参入したからね。これはかなり大きい。
「やっほー、来たよー!」
「あ! マーベルさん、 お疲れ様です!」
「おやおや、何か人が……増えてる?」
「カミラちゃんです!」
「……私は裏方担当。よろしく」
「へぇ、成る程ね。それにしてもテキパキ仕事するわね、もしかして楽しいのかしら?」
「……うん、最近楽しい」
「それはいい事ね! あら? 奥のあの子は……あっ!」
ガシャーンと、何かが崩れる音が店内に響き渡った。あちゃー、またやっちゃったか。
「……行ってくる」
「あらー、大変ね」
「失礼しましたー!」
すかさず大きな声でフォローを入れるレミリア。こういうトラブル時は彼女が一番強い。受付から素早く二歩前に出て、お客様の前でペコりとお辞儀をしながらの謝罪。レミリアのフォローはいつも的確なのでお客様はきっと怒る気にならないだろう。あのタイミングであんな顔で真摯に謝られては怒った方が悪者だ。トラブル時でもその場の全員に不快な思いをさせない気配り、レミリアには本当に助けられているなぁ。
「……大丈夫?」
「か、カミラちゃん。わ、私……」
「……大丈夫、私がやっておく」
「ごめんなさい……」
そう、このプラムという三人目の従業員。引っ込み思案でお客様と対面するのが不可能で、かつドジっ子ときた。
ガシャーンと、再び何かが壊れる音がする。そしてレミリアの謝罪が。今度は何だろう……。ん? カミラが僕のところにやってきた。どうしたんだろ?
「どうしたの?」
「……プラムの事」
「うん、何?」
「……見捨てないで」
「えぇ……、見捨てたりしないよ。どうしたの?」
「……あの子、あまり器用じゃないから」
「みたいだね。でも最初から出来る方が珍しいんだからさ。カミラがちょっと優秀過ぎるんだよ?」
「……私、裏方しか出来ない」
「裏方が得意ならそれでいいでしょ?」
「……ありがと」
何かに納得出来たカミラはトタトタと自分の持ち場へと帰還していった。
あの子も何だかんだと、裏方ではとてもありがたい仕事をしてくれている。少し、欲を言うなら。もう少し愛想があっても良いんだけどな、とは思うけどさ。
慣れてくると無表情の中にも表情があって、なんだかんだであの子も可愛いんだけどね。
プラムは……。
まだ少し時間がかかりそうかな。