第189話 帰宅
「昨日はありがとうございました、ご馳走さまです!」
「楽しんで頂けたのでしたら何よりですわ」
「とっても楽しかったです!」
「ふふ、では向こうに戻った際には改めてお礼させて下さいな」
「良いんですか!? カミラちゃんやプラムちゃんに悪いなって思ってたんで……あの……」
「良いのですわよ」
「ありがとうございます! ご主人様、みんなでお呼ばれさせてもらっても大丈夫ですか?」
「勿論、みんなで行かせて貰おうね」
「うわー! 私みんなにする話が沢山あります!」
「だね、そろそろ帰らなきゃ」
「本当に、お世話になりました」
少し遠慮がちに笑うクラリスさんの手を取って、無理やり握手の形にする。やっぱこれが一番しっくりくるよね、いつものやつだし。魔力は流さないけどさ。
「遠慮なく遊びに行かせて貰いますよ?」
「ふふ、私も楽しみにしておきますわ」
「それじゃ、また」
「ええ、道中お気をつけて……いえ、きっと大丈夫ですわね」
「みんないますからね」
帰りはニーナさんたちに同行するという、依頼ではなく対等な立場で帰らせて貰える事に。
悪い笑いをしたニーナさんに「護衛の報酬は僕らから院長さんに払った方が良いかな?」とか言われちゃってさ、苦笑いしながらよして下さいよと同行で話は纏まった。
実感ないから違和感が凄いよね、こっちにはレミリアもいる訳だし。
そんなこんなでクラリスさんの屋敷を後にして、僕らはコーラルカーンからラベルカーンへと向かう帰路に着いた。
______
「何もないとやっぱり早いよねー、もう見えて来たよ?」
「もうですか? レミリア、もうすぐだって」
「あ、ご主人様! あそこに何か見えますよ!」
帰りは特に何事もなく、ただギルドで馬車を借りて、カサビムさんとダリアさんが殆ど二人で全部こなしてくれたので僕らはゆっくりさせて貰えた。
みんなちゃんと治療したらしくて怪我はすっかり良いみたいで何よりだった。
そして僕らは戻ってきた。
僕らの店のある、ラベルカーンに。
「あら、思ったより早かったわね院長さん。もう少しかかるのかと思っていたのだけど……ああああああレミリアちゃんがいるぅぅぅぅぅ!!!」
「おひさしゅむぎゅ」
「あぁもうダメ、レミリアちゃん欠乏症で私さっきまで干物の様な心で仕事してたのよ、責任とって今日は私の家に……」
「何の責任なんですかそれ……」
「むぐぐ!」
「あぁ、レミリアちゃん……可愛過ぎる……」
「それに今日は……みんなとも久しぶりに会いますからね」
「あ、確かにそうね。私はまた改めてお店に顔を出させて貰おうかしらね」
「むぐぅぅ!」
「マーベルさん、レミリアが……」
「あらやだ」
「フハー! ただいま帰りました、マーベルさん!」
「フォォォレミリアちゃぁぁぁん!!」
「むぐぅぅ!」
「えぇ……」
なんかこのやり取りさえも久しぶりな気がするな……。そんなこんなでギルドに馬車を返却して、沈黙の狩人とも解散。
僕らはまず、ダギルさんのお店へと向かった。
何が変わった訳でもないけど、ちょっと懐かしい。
「ごちそーさん、美味かったよ!」
「……是非、また」
「あいよ、ありがとねー」
お客さんを見送ってる……カミラがそこに。
あぁカミラだ、相変わらずちっちゃいなぁ。
「今の人でランチお終いだよ、店の看板片付けなきゃ」
「……準備中の、立て札」
「あ、忘れてきた。取ってくる……」
「……油断、大敵」
「油断してないよ、ちょっとほら、ランチ終わったーって安心しちゃったから」
後からプラムも出てきて、うん。元気そうで何より。
さて、話す事が沢山だ。
ランチ終わったみたいだけど、今日はちょっと無理言って作って貰おうかな!
「よ、お疲れさま。頑張ってるね」
「……え?」
「……今から、昼食」
「なら混ぜて貰おうかな」
「ただいま帰りました! カミラちゃん、プラムちゃん!」
「えええええええ! もうビックリするからやめてよ! ……二人ともおかえり。ねぇいつ戻ったの?」
本当、プラムは良い反応してくれるよね。
ご飯まだだったみたいだし、ご一緒させて貰おうか!
「戻ったのはついー」
「……取り敢えず、ご飯」
「さっきだよ。……カミラはブレないね」
「……おかえり」
「ただいま」