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第186話 事の真相

「まずは私から話をさせて頂きますわ」

「よろしくお願いします」


 クラリスさんが教えてくれた話は、正直部外者とも言える僕なんかが聞いていいのか分からないレベルのキナ臭い話だった。


 貴族である彼女の家は民から税を受け取る立場で、それを民に還元する事こそ責務と考える、所謂普通の貴族なのだそうだが。


 やはり全てがそういう訳ではないらしく、それを特権階級だと勘違いした一部の者たちは、その税で私腹を肥やし我欲を満たす為に使っているらしい。


 厄介なのはその手の輩が比較的高い地位にある者の中にさえ存在にするという事。


 そいつらが自衛する、と言う事は邪魔な者を排斥すると言う事。そして彼らが力を入れるのは国益ではなく我欲。その成れの果ての姿が今回の顛末らしい。


 今回、クラリスさんが濡れ衣を着せられた、癒着を疑われた事件の大雑把な内容はこうだ。


 奴隷を集めてその奴隷たちの中の珍しいタイプの種族を徹底的に実験研究し、その末に残った生きた個体すらも快楽流用する。そんな悪魔の実験場がこの街にはあったらしい。


 そしてその温床を提供していたのがそれなりに有力な貴族だったと。その権力を最大限に行使し、情報の流出を徹底的に封殺し続け、今回の件に至るまで誰にも見つかる事なく事を為していたそうだ。


 そこに、何者かが介入した。


 誰なのかは分から無いそうなのだけれども、炎将ガンディス様に縁のある誰かがあの場所を見つけ出し、事を終えた後にリークしたとかで。


 リークした時点で実験の実行人であった科学者達は全員死亡。首謀者と見られる者は消し炭状態でみつかったらしい。そしてその場で快楽参加していた末端貴族も皆殺し。


 ついでに首謀者とも言えるその場を隠し続けていた諸悪の根源たる貴族も殺されていたそうだ。



 それ故に、今回の件で悪事を働いていた貴族達は大きく力を削がれる結果となってしまった。


 またその後始末をガンディス様が取り仕切った事で有耶無耶にする事すらままならず、故に少しでも立場を上手く取らねばと言うところで情報操作の末にケインズバーグ家に押し付けてしまおうと、かなり無理なこじつけをされていたと。


 だが、そんな無理なこじつけであったとしても、両親不在の立場であったならどうなっていたか分からないと、悲しそうな表情のクラリスさんが言葉を締めくくった。


「前回の事で、勝手ながらナビリス様には病を癒す力が備わったのだと……推測しておりました」

「その……通りですね」

「そしてそれは水の属性魔法(エレメント)による治療とは全く方面を異らせる物であり、皆が匙を投げる状況すらも……打開できるのではと」

「勿論、僕にも出来ない事はありますけどね」

「両親さえ復帰出来れば或いは、そんな……打算的な考えで貴方を利用したと言うのに、貴方という方は何も嫌な顔をする事なく……」

「あ、その、その辺りはね、もう大丈夫なので」


 また湿っぽくなりそうだったので軽く切り上げておいた。これ以上やったら、流石に……ね。


「ねーねー、取り敢えず院長さんの話も聞いておこうよー」

「……そうですわね、お話お聞かせくださいますか?」

「勿論です」


 良い感じに切り込んでくれたニーナさんのお陰で話が逸れずに済んだね、危なかった。

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