第184話 身体が勝手に
なんでこんな事したんだろ。
自分でも不思議だった。
でも、少しやつれた表情で、それでも笑って見せるクラリスさん。
今屋敷の中はバタバタしているけど、この状況までここが維持できたのは彼女が頑張ったからだ。
そのクラリスさんが、それでも笑っている。
そんな姿を見て、僕は思わず前に踏み出して……彼女を抱きしめてしまった。
「え……あ、あの……」
「お疲れ様ですクラリスさん。残っていた問題は全て解決してきました。後処理も済んでます」
「そ、それは……えっと……その……」
「詳しくはまた後で話しますよ、こっそりね」
「こっそり? ふふ、そう……ですわね」
耳元で、少し意地悪めいた雰囲気でクラリスさんに結果報告。一瞬強張っていた肩の力も、今はもう抜けている。
こんな小さな身体で、……一人で戦っていたのか。
「もう大丈夫ですよ」
「……大丈夫……なのですかね」
「大丈夫ですよ、僕が来ましたからね」
「……ご迷惑を……おかけしました」
「迷惑だなんてとんでもない、知ってるでしょ? 僕は意外としつこいんですよ?」
「……?」
「簡単に、離したりしませんから」
「!?」
そう言って、少し強く抱き寄せる。
フルフルと肩が揺れ始める。
「あ、あの……す、すみません、これは……」
「もう良いんですよ、泣いても」
「!?」
きっと、ずっと気丈に振る舞っていたのだろう。見てなくても想像出来てしまう。
この人は……とても優しいから。思い込みが激しくて時々人を傷つけたりもしてしまうけど。でも心根は優しくて、大切な物にいつも一生懸命で。
「……っ……っ!」
そして頭も良いから、頑張ってしまう。
頑張り過ぎてしまう。
まずはゆっくりと、心を休ませてから。
それからゆっくり話ましょう。
あー。
凄い事しちゃったな……。