第183話 屋敷へ
さて、これでやるべき事は達した。
後は……屋敷に向かうだけか。
ミールはその身体のサイズ感を小さくし、今は僕の肩の上に乗っている。不要な荷物もギルドに預けておいた。
レミリアと二人、漸くここまで辿り着いたねと、結構長かったねと言いながらクラリスさんの屋敷を目指した。
森でのやり取りは僕としてはかなり疲れたけど、レミリアは意外と平気そう。やっぱ地元だったから疲れ方が違うのかな? レミリアは久しぶりにクラリスさんに会えますかね? っと尻尾をふりながらワクワクしている。僕も会えるのは嬉しいけど、まぁ遊びでもないし……気は引き締めておこう。
……前も来たけどここ、結構近いんだよね。
話してたらあっという間に着いたなぁ。
さてさて、まずは門でやり取りを済ませる。門番さんに名前を言ってクラリスさんに会いたい旨を伝えると、証明する物は? と聞かれたので、既に中にいると思われるニーナさんとルルリさんの名前を出しておいた。するとまずはお嬢様に連絡を入れますと。そこから少し待った後、その二人を迎えとする事で入る事が許可された。
「おーい、お疲れー! 大丈夫だった?」
「ご苦労様です。ご無事でしょうか?」
二人とも慌てて走って来てくれて、似た様な事を二人して聞いて来た。ふふ、本当に良い人だよねこの人達。
「こちらは問題なく無傷で討伐を終え、ギルドへの申請も済ませてきました」
「申請も? 助かるよそれ、よく通ったね」
「あ、ちょっとまぁ……何とか」
裏技とかガンディス様とか言いそうになったけど何とか我慢出来たよ。話が拗れるだけだからね。
今聞きたいのはそこじゃない。
「まずは入って歩きながら聞いて良いですか?」
「あ、そうですね。では歩きながら話ましょうか」
ルルリさんがこちらですと案内してくれ、その隣のニーナさんが色々教えてくれた。
まず、ご両親は意識が戻ったと。まだ全快とは程遠いらしいけど意思の疎通が出来る様になったのが大きい。
グッジョブミール、ナイスだね。
鞄に入って貰ってるミールを軽く揺らしておいた。分かってくれたかな?
それはさて置き。
両親が復帰した事で話の信憑性が上がり、細かい疑いは晴れていった。そもそも堅実な動きをしていたクラリスさんの実家、ケインズバーグ家は両親の復帰と日頃の実績から徐々に疑いが晴れつつあるらしい。
というよりも、その崩し難い堅実な状況であったが故に、毒による大胆な攻撃に苛まれたとも言えるだろう。そこに貴族による大規模な悪事の露見ときたら、そりゃ便乗しようとするよね。
だって当人は意識不明なんだもん。
悪者サイドとしてはラッキーとしかね。
でもこれは飽くまでもその状態だからこそ、ケインズバーグ家は追い込まれていたに過ぎない。ご両親が復帰され指揮系統も復活。判断の基準を得た屋敷の面々はより明確な行動を開始し、現在巻き返しを図っていると。
その辺りまで聞いた所である扉の前に到着した。
その扉をゆっくり開けると……。
「ご無沙汰……しておりますわね」
そこには、少しやつれたクラリスさんが居た。