第180話 ボスになるという事
その後、ボスの話をゆっくり聞かせて貰った。群れのボスには僕がなるしかない事を何度も強調され、そこからは逃れられない事は理解出来た。
でもだからと言って森で群れを守る生活をするつもりもない。今回のそれは完全に流れ弾だ。それを理由に群れをボスから奪い取るなんて気が引けるけど……断ったら死にそうな雰囲気だったから断れなかった。
ダメだな本当……。
で、僕が群れのボスになったは良いけれど、本来なら群れに二匹のボスは必要ないという事でボスは去るみたいなんだけど、僕の意思でサブのボスに就任して貰った。
飽くまでも僕の生活基盤は人の世界にあるから、時々はこれてもまず滅多に来ないだろう。だからボスには引き続き立場を同じくしてもらう事に。
そしてその後、もしボスの息子の中に有望な者が現れたら、その者と決闘の上で、改めて群れを率いる存在となってもらう事も約束しておいた。
どうも武者修行の旅に出ている優秀な息子がいるらしく、その子に元々は継がせるつもりだったそうだ。
僕がボスになっちゃうとこの集落が滅んじゃうからね……、そこは上手く責任転嫁出来ればと思っている。
ボスには僕の完全な代理を頼んでいるって訳。全権を委任している。彼の敗北は僕の敗北だ。それで……大丈夫だろう。
その上で、漸く今回の話で森や群れがどうなったのかを聞かせて貰う事が出来た。
森が受けた被害自体は小さいらしい。木々の損害なんてここでは茶飯事だと。その上で獅子族は息子が二人とメスの大人が九人、亡くなられたらしい。
聞いた瞬間に、その責任が僕の上に乗ってきた様に感じて表情が曇ったのをボスに見破られたらしい。すぐにフォローされた。数人を残してほぼ全員で死ぬ覚悟だった。今僕がここにいなければここに見える殆どの獅子族は死んでいた、ありがとうと。
お礼を言いたいのはこっちだよ本当に……、こんな酷い事して、しかも気持ちまで汲んで貰ってさ。寛大過ぎる気がするけど、ここでは力が全てだからそれで良いそうだ。
感覚的にズレてるから釈然としないけど、彼らが補填や賠償に近いものなんてとんでもないと。であれば時折顔を見せてくれれば十分だと、そう言われた。気に入った女がいればとかも言われたけど即座に断った。
なんか凄いギラギラした目で女性の獅子族の方から見られてたのは分かってたからさ……。それで少しでも興味を示そうものならこぞって襲われていたかもしれない……。強者と子を為して強きを残す、その為にボスが入れ替わるとメスは発情するのだとか。
そのエネルギーで普通に減ってしまったその人数に良い影響が出てくれればそれでいいかなと、即座に辞退。女性陣が少ししょんぼりしていた様に見えたけと、ボスの言う事は絶対っぽいから大丈夫だろう。
ちょっと怖かったよね。
さて、森では上手く友好関係を築けた上で、人が齎した損害に何かを補填する必要も無いと明言された。強いて言えば、僕がまたここに来ればそれで十分だと。
なのであれば長居は無用。もう暗かったから今日は泊めて貰う事になったんだけど。僕の寝床に女性が待機してたから全員退席して貰って、レミリアとミールの三人で眠った。
レミリアに来て貰ってて良かった……。