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第176話 毒帝

「捕らえろ」


 辺りに充満する【黒】に命を下す。使命を与えられた黒は嬉しそうに踊り、キメラの持つ触手よりも遥かに高性能な黒の一つ一つが散り散りになろうとしていたキメラの破片たる肉塊たちを捕縛する。


 数にして、既に十や二十はいたかもしれない。


「ヒィィィィィ!!!」


 突然意思を持った動きを始める黒に動揺を隠せないスザンナ。怖がらせてゴメン、すぐに終わらせるから許して欲しい。その上で、後で謝らないとね。


 捕縛された肉塊たちは黒によって持ち上げられ、身動き一つ取れない状況に追い込まれる。


「呑み込め」


 瞬間、黒は掴んでいた肉塊を瞬時に包み込むと、そのままそこにはまるで何も無かったかの様に黒だけがその場に残った。


 本体の魔力は今の動作でかなり削られている。


 もう少しかな。


 特に待つ必要もないので、キメラが自らの腕を引きちぎるのを待つまでもなくそこを狙い撃ちにする。


「腕を削ぎ続けろ」


 絶えず修復される無造作に生えるキメラの腕は、生える度に黒に飲み込まれ、それは元々無かったかの様に消失し続けた。


 痛覚はないらしい、良かった。


 腕を組みながら空中から腕をもがれ続ける様子を暫くただジッと見ていた。スザンナもその場に腰を落として動けなさそうだ。ただ見守っている。


 キメラの魔力もかなり減ってきたね。


 そろそろ頃合いか。


 パチンと指を鳴らして辺りに散っていた黒を僕を中心に収束させる。


 削れたとはいえそれ程余裕がある訳でもない、無駄な力は使えない。全力で臨む。


 ねぇ、この黒の根源たる【毒帝(ポイズンマスター)】。


 僕は君の力を借りている訳なんだけどさ。


 君はどんな姿をしているんだい?


 いつか……ね。


 あぁ、今はまだ僕が足りないからさ。


 いつか必ず。



「【毒帝(ポイズンマスター)】が命ずる」



 僕の周りの黒が、黒紫も孕んだ様な異常な渦巻き方を見せ。


 そして言葉が紡がれるのを待つ。


 嬉々として、待っている。


 僕はボソリと、小さく呟いた。



「ソレを、滅ぼせ」


「ヒィィィィィィィィィィ!!」



 全ての黒が待ち望んでいたその時を堪能する。


 呑み込まれていくキメラ。


 とは言え、キメラはとんでもない魔力に質量。


 すぐにとはいかない、けれど確実に、着実に。


 その全てが変色し、膨れ、溶かされ、消える。


 そして消えゆくその触手も肉塊も、余す事なく全てを呑み込む蹂躙する黒が平らげる。


 その混沌とした状況が収束し、黒はどんどん小さくなって、最終的に小さなボールの様なサイズとなってその場に浮遊していた。


「戻れ」


 その黒いボールは僕の両手の上に移動する。


 そしてそのまま静かに。



 その場から消え去った。

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