第170話 三つの問題
「まず先日の貴族の汚職、これの関与を疑われております。しかしこれは両親の復帰で解決すると思われます」
「よし、まず一つ目はクリアですね」
恐らく両親がいない事で発生している問題もあるだろうとは予想していたので、ミールのお陰ですんなりいったよ。後でミールに何かプレゼントなきゃね。
「二つ目がライトレア家という貴族がいるのですが、元々は親交が深く、両親同士が懇意にしていたそうなのですが……」
「何か問題が?」
「はい、ライトレア家は全ての状況において今起こっている事の先取りをしておりまして……」
「え、ならもしかして……」
「一応、死亡者は出ていないのですが、当主、奥方もご子息も、全員が行方不明に。そして召使いも全員解散されているそうです」
「……成る程、今回の件の行く末って訳ですか」
「はい、その手引きや共犯を疑われております」
「……分かりました」
厄介な貴族を纏めて葬ろうって事か……滅茶苦茶だ。恐らく、クラリスさんの両親とライトレア家は正義の貴族だったのだろう。本来なら汚職を止める側の存在であるそれらに、この件を擦りつけて円満解決って訳か。
……そうはさせないけどね。
「そして最後に、未だに討伐の完了していない実験魔獣の討伐です」
「……成る程。他に問題はないのですか?」
「勿論細々とした問題はありますが、解決不可能な大問題がその三つだそうです」
まずライトレア家の問題は現状僕には何のアプローチも出来そうにない。その辺りに明るくも無ければ、ツテも特にない。
なら……魔獣の討伐か。
「実験魔獣の対応はどうなってますか?」
「一応冒険者が派遣されてはいるそうなのですが……」
「成る程、手に負えないと」
「直接見てますからね、私たちは。それにもう一つ問題が」
「問題?」
「実験魔獣は西に侵攻しており、このままいくと間も無く森の世界の領域に入るそうです」
「……それはマズイですね」
森の世界、世界とはそれぞれの種族の縄張りみたいなものだ。因みに僕らの暮らすここは人の世界。
後は魔の世界と、竜の世界、海の世界があり、互いに睨み合いながらも不可侵を続けている。いがみ合ってるのは魔の世界と人の世界くらいだ。
森の世界にはエルフや獣人、そして森に属する獣の魔物や虫の魔物。植物の魔物まで存在する。
そんな所に人の世界から化け物を送り込もうものなら……大きな問題に発展しかねない。
成る程、大問題だね。
「今はどの辺りまで?」
「もうかなり近付いているそうです、間に合うかは微妙な所ですね」
「……単独で森の世界に入るのはあまり良くないけど、すぐに襲われる訳でもないか。僕がその魔獣の討伐に当たります」
「私も行かせて下さい!」
「レミリア?」
「私は森の世界出身です、戦いのお役には立てないかもしれませんが、諍いの回避には貢献出来るかもしれません!」
「……分かった、行こうか」
奴隷となっているレミリアを連れて行く事がどれくらい大丈夫なのかは正直わからない。
でも彼女なりに役に立ちたそうに強い意志で提案してくれている。無下には出来ない。
「クラリスさんに魔物の討伐は任せて大丈夫だとお伝え下さい。あとミールにはその後クラリスさんと共にいる様に言っているのですが、帰還する旨を。代わりにクラリスさんの身の安全をよろしくお願いします」
「分かりました!」
それぞれにやるべき重大な事がある。
僕は……魔獣の討伐だ。