第17話 差し入れという謝罪
「……えっと、どちら様でしょうか?」
「ハッ、本日からこちらの警備に当たりますサリファと申します!」
「えぇ……」
「ご、ご主人様?」
朝一番、店に出勤すると既に入り口の横に兵士らしき女性が槍を持って直立していた。どう言う事なのかな……。
「あの……まさかとは思いますが……」
「ハッ、当主の命により任に就いております!」
「令嬢さんか……」
やっぱりか。
あれからというもの、令嬢さんからの差し入れの量が常軌を逸している。店の中のインテリアも段々と増えてきてしまった。物凄くシンプルだった椅子しかなかった僕の店はもう存在しない。今はどこに出しても恥ずかしく無いような普通にアリな雰囲気だ。
院の存在として逸脱した不要な物は殆どなく、実用的、かつ美的にセンスのあるものばかりでスッカリ様変わりしてしまった。
そして遂に……人が派遣されてきた。これどこまでいくのかな? 何だか怖くなってくるよ……。
「お邪魔しますわ」
「いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます!」
「あらレミリアさん、ごきげんよう。サリファが何か粗相を働いたりしてませんこと?」
「お陰様でとっても安全です!」
「それは何よりですの」
もうすっかりレミリアも慣れてしまって、存在感のある常連さんが増えたなぁといった感じだ。本人曰く、差し入れは謝罪の意だそうで、そう言われてしまうと断るに断れない。まぁこれ以上はと伝えたら物の差し入れは無くなったので分かってくれているとは思うんだけど。
「お次のお客様、診察室へどうぞ!」
「失礼しますわ」
今日も令嬢がやってきた。この人、凄く粘るんだよなぁ。何か喜んでる節もあるし、どうすれば正解なのか未だに分からない。
「きょ、今日もこのまま……」
「ハイハイ……、スイートルームへご案内しますね」
でも何だかんだで手を引いて扉の前に連れて行くのがルーティン化しつつあるのだから慣れって恐ろしい。
「あ、あの……次回は私の友人も同行してもよろしくて?」
「え? ……それは診察にって事?」
「勿論ですわ」
「そりゃ……お客様としてなら大歓迎ですけど」
「では連れて参りますの。今日もお世話になりました」
「……お疲れ様です」
災い転じて福ってのはこういう事を指しているのかな。……そろそろわだかまりも無くなってきた事だし、令嬢さんにも何かサービスしてあげたいなぁ。
お礼が言いたくなる程の謝罪だからね、むしろ謝罪というよりもはや貢物だよねコレ。うーん、どうすれば喜んで貰えるんだろ。