第169話 ミールの仕事
「ご主人様、私たちはどうしますか?」
「レミリアには視覚的、感覚的な見張りを頼む。僕はちょっと特異魔法に集中したい」
「分かりました!」
まず、今はまだ見張りが必要なほど危険はないはずだから、ひとまず普通に誰かの迷惑にならないようにレミリアにはちょっとだけ注意する意味で見張りを頼む。
結局、クラリスさんの元にはニーナさんとルルリさんの二人で行って貰った。僕の予想だと、クラリスさんの関係者の体調不良は【毒】によるもの。
であれば、やはりそれが急に完治するのはマズイ。
今抱える大きな問題点は、まだこの件の問題点を理解出来ていないという前提の話。それをルルリさんに持ち帰って貰うのが第一。
そしてその際に、クラリスさんの幼馴染であるニーナさんに両親にも挨拶がしたいなどと理由をつけて面会。預けてあるミールが解毒するという流れ。解毒だけなら別にミールも出来るからね、僕が行ってもややこしいだけだ。
でも根底にある問題はそこじゃない。これも確かに問題だけど、この問題のせいでクラリスさんが抱えている問題を解決するのが今回のミッション。恐らく何かしらの別件でクラリスさんは追い込まれいる筈。
中に入って目をつけられたら厄介だから、まずはその問題点を素早く理解してルルリさんには一旦こっちに帰還して貰う。
そういう手筈になっているから、僕としては少しでも情報を探るべく、今は意識をミールと屋敷内の毒に集中する。ニーナさんとルルリさんには少し僕の魔力を預けておいた。
居場所は分かる、ルルリさんはもうこっちに戻り始めている。そして離れたニーナさんはゆっくり移動し、最も強い毒の元へと近づいていっている。
きっと、あの毒の宿主はクラリスさんの両親なのだろう。
「遅くなって申し訳ありません! 話を聞いてきました、やはりややこしい事になっているそうです」
「素早い対応ありがとうございます、一旦移動しましょうか」
「そうですね」
居場所は元々伝えていたけど、念のため屋敷からは離れておこう。
……屋敷内の嫌な毒が消えた。
ナイスミール、良い仕事するね。
「ナビリスさん、ニーナさんの方は大丈夫でしょうか?」
「今ミールが仕事をした感覚がありました。恐らく両親はこれで助かります。時間はまだかかると思いますが」
「凄いですね……こんなあっさり解決してしまうなんて。謎の体調不良でクラリス様の専属の医療機関の人たちが匙を投げた内容だと聞いたのですが……」
「ミールは優秀なんでね」
僕の能力の優しい部分をそのまま引き継いでくれてるからね、そこは信用してる。それに万が一の時もミールは逃げ足は速いから大丈夫だと思うしね。
ニーナさんが解毒の手段を上手く隠蔽してくれてる事を願うしかないけど、クラリスさんがいるから大丈夫だと信じよう。
「早速ですが、話を聞いても良いですか?」
「はい、問題点は大きく三つありました」
三つか、どこまで何とか出来るだろうか……。
出来れば全部何とかしてあげたい所なんだけど。