第167話 お礼を言って
「それではここで失礼します。今回は本当にお世話になりました」
街の中央にあるコーラル城、その入り口。もうここでの用は済んだ、なら早く行かないと。名残惜しい気持ちはあるけど、それだとズルズルいちゃいそうだし、クリス様にも悪いしね。
「本当にありがとうございました。私……本当に嬉しくて……」
「気にするな、こちらとしても十分見返りは頂いている。それに本当に何もしてやれなかったしな」
「そんな事ありません! ずっとずっと……本当に怖くて……。考えると怖いけど、考えない瞬間に気付いた時も怖くて……。でも、だからといって皆様に迷惑もかけられなかったし、どうしようもない事も分かっていたので……」
「そうか……なら良かった」
クシャッと、レミリアの頭を撫でるクリス様。
「……少し良いか?」
「……?」
ん? そのままレミリアを撫でて……ん? 心なしか幸せそうな顔してる様な……何なんだろ。
「おっとすまない、馴れ馴れしい振る舞いを許してくれ。それより、他に何かないか?」
「あ、あの……もし大丈夫なのでしたら……」
「ふむ、言ってくれ」
「お姉ちゃんに、私も大丈夫だからお姉ちゃんも頑張ってねって。また……会おうねって伝えて頂けますか?」
レミリアが少しウルウルした表情で、背の高いクリス様に上目遣いでお願いしている。僕なら多分断れないやつだ。
「ふむ……上手く言い訳を考えて、伝えられる様に善処しよう」
「あ、ありがとうございます!」
涙をポロポロこぼしながら尻尾を振るレミリア。
クリス様も困ったなって顔はしているけど、優しく微笑んでいる。この人に仲介してもらえて本当に良かった。
「それではそろそろ行こうと思います」
「改めて実験魔獣の討伐、感謝する。また会おう」
「ありがとうございました!」
踵を返して城の中へと去り行くクリス様、その後ろ姿で軽く手を振ってくれて、そのまま見えなくなった。
「良かったな、レミリア」
「はい、本当に本当に良かったです……」
「もう行かなきゃだけど、取り敢えずレミリア」
「……はい」
「おいで?」
「……ふぇぇんご主人様ぁ……良かった……お姉ちゃんが……お姉ちゃんが居ましたよぉ……」
「うんうん、本当に良かったね」
時間に余裕がないから急かせかしたって良い事ないからね、僕もまだちょっと気持ちが昂ぶったままだ。二人とも頭を冷やして落ち着かないとね。
話はそれからだ。
そう……クラリスさんの大変なそれを、こんなゴチャゴチャした感情と頭で行ってもダメだからね。落ち着いて行動出来る様に、気持ちはリセットしていこう。